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2012年11月9日・30日
2013年11月15日
「和食×生かす」
自然と人が共に作り出した、美しい食の文化、「和食」。
自然の恵みをあますことなく生かし、頂く和食は、四季折々、自然とともに作られてきました。
1200年に渡る歴史の中で様々な食文化を育んで来た、京都。
銀閣寺の畔に、ひっそりと建つ「草喰(そうじき) なかひがし」。
京都イチ、予約が取れないと言われる人気店です。
店主の中東さんの一日は、調理場ではなく野山に入ることから始まります。
野山を歩き、その恵みの声に耳を傾け、食材を得る。
自然を頂くことは、自然と一体になること。
口に含んでは、味わいを確かめる。
自然からその美味しさを聞きだすのが、原点です。
季節の野菜を仕入れるのは、知り合いの農家の方だけ。
作った人が分からない野菜は、一切使わないと言います
自然の恵みを肌で感じるために野菜も出来るだけ自分の手で収穫します。
「いただきます」。
自然の恵みへ、そして作った人々に感謝してから、食事を頂く。
日本にしかないというこの言葉は、自然を敬い、共に暮らしてきた証。
どこか心休まる和食の味わいには、自然の恵みが生き続けているのです。
京都で100年もの間、極上の料理を振る舞う名店、「菊乃井」。
優れた食文化を継ぎ、その魅力を世界に広める三代目主人、村田さん。
旨味を中心にして作られた料理は、世界でも日本だけです。
その旨味を生む出汁を引き出すのは、水。
かつて豊臣秀吉の妻、北政所ねねが茶の湯に用いたとされる井戸水、「菊水の井」。
菊乃井はその水を代々守って来ました。
やがてその水を料理に用いる様になり屋号を菊乃井とします。
今なお、井戸水にこだわり厳しい水質検査を経たその水を使って料理をしています。
世界中のトップシェフが旨味の研究に訪れ、和食、旨味の知恵をそれぞれの料理に活かしています。
その結果、料理界の流れも変わってきたといいます。
村田さんは、行政とともに和食を世界遺産にする申し込みをして、
和食の素晴らしさを世界に発信しています。
四季折々、豊かに表情をかえる、日本の風景。
和食の命は、季節の移ろいを巧みに生かすこと。
その食材の彩りと、料理人の繊細な手仕事を引き立てるのが・・・「器」。
"器は料理の着物である。"
かの魯山人は、こう言いました。
ただ、食べるのではない。
より一層、深く味わうには、料理と響き合う器があってこそ。
これまで多くの取材依頼を断り続けて来たミシュランも認める名店に初めてテレビカメラが入りました。
そこの店主は、日本画に魅せられ、画家を志していた小野寺さん。
料理人の見習いを始めた頃、器と料理が生み出す美しさを知って以降、
名だたる作家の作品を集め、美しい季節の移ろいを、食の世界で描いています。
自然に対し、作る人に対して感謝をこめて料理をいただく。
相手を思いやることから始まる和食には、大切にしたい日本の心が秘められていました。