ボクらの地球
放送内容
知床四季物語
~ヒグマの森とクジラの海 川と海と森が育んだ奇跡の命たち~
海から山脈が顔を出したような地形の知床半島には、大小およそ80本ほどの川や滝が海に流れ込んでいる。夏の終わり頃、知床の自然に魅せられた自然写真家、寺沢孝毅さんはそのうちのひとつの川の河口を訪れた。羅臼昆布(らうすこんぶ)が群生する海底に、海の栄養をたっぷり蓄えたカラフトマスが、今まさに遡上(そじょう)を始めようとしていた。
秋。産卵のため、岩や石にぶつかり全身を傷だらけにしながら必死に上流を目指すカラフトマスを、ヒグマが狙っていた。川の岸には、食べ残されたカラフトマスの亡きがらが散乱している。ヒグマによって森の中まで運ばれたものもあった。そうした大量の亡きがらは、やがて森の肥料となる。カラフトマスは海から森へ栄養を運び、森を豊かにしているのだ。
冬。知床の海では、サケなどの魚を求めてやってきたトドやアザラシなどの海獣類が見られる。流氷の季節、アザラシは、氷の上で出産と子育てをする。寺沢さんは海に潜り、流氷が知床の海を豊かにしている理由を探る。
夏。その海の豊かさを証明するように、イカなどの魚類を1日に1トン以上も食べるマッコウクジラが知床にたくさん集まる。 そして、再び秋。寺沢さんは錦彩る知床の森に入り、海を豊かにしているもうひとつの秘密を探り当てる。それは、舞い落ちた落ち葉にあった。落ち葉は肥料となって森を豊かにするだけでなく、海をも豊かにしていたのだ。
寺沢孝毅(自然写真家)
1960年生まれ
北海道士別市出身
北海道天売島を拠点に海鳥たちの保護活動を勧めながら、その写真を撮り続けている。
その他、活動する取材地も広く、知床や西表島、海外では熱帯のボルネオからロシア、アラスカ、ノルウエー、カナダなど北極圏までに及び、希少な自然を記録している。
2009年 守りたい命のプロジェクト有限責任事業組合(LLP 守りたい命プロジェクト)を設立。失われゆく地球環境の今を写真で発表し、その保全活動に勤めている。