五木寛之の百寺巡礼

五木寛之の百寺巡礼

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放送内容

【五木寛之 スペシャルメッセージ】
よりどころを探す今こそ 美しい日本の原風景を

自分で話すのは照れくさいのですが、13年前この番組が放送されていたときは、時代をちょっと先取りした感じの企画だったと思うんですよね。
その時は高度経済成長の余波が残っている時代で、国土がある意味では開発し尽くされたときでした。
都会だけではなく地方の美しさまでどんどん、どんどん変わってしまっていた。そういうなかで社(やしろ)や寺の周辺にしか、美しい日本の姿や魅力が残っていないと、つくづく痛感しました。
今は少子化と高齢化が極度に進んでいて、日本人が大きな不安を抱えている。病気がある、経済的な不安がある、老後の問題がある…。こういう問題に真正面から向き合い、どういう風に充実した人生を送っていくか? 日本人がやっと真剣に考え始めた、このタイミングで生き残っている日本の姿を紹介する「百寺巡礼」が13年の時を経て改めて放送することは、とても意義のあることだと感じています。

前回放送されていたとき、私は70代前半でした。北から南へ日本全国、百のお寺の完走したのは、今でも嘘のように感じます。
それでも、百のお寺に出会えたのは、目に見えない大きな力みたいなものが肩をおしてくれたんだと思います。だからテレビという流行などがテンポよく流れていく。
消費的な世界のなかで、こうやって再び番組をたくさんの人に観ていただけるというのは、テレビ文化の成熟というものを示していると思います。
百寺完走できたのは、大変苦しい作業ではありましたけども、一種の奇跡のように感じるところもあります。歴史など難しい話だけではなく、その寺の周辺にある風景、人情など、みなさんに親しみやすい情報も伝えていきます。
13年の時間をおいた今だからこそ、かえっておもしろく感じてもらえると思います。改めて観ていただけるのは私にとってもうれしいこと。ぜひ番組を楽しんでください。

五木 寛之(いつき ひろゆき)
1932年9月30日、福岡県生まれ。早稲田大学文学部ロシア文学科中退。
1966年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、1967年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞などを受賞。近著に「はじめての親鸞」など。