五木寛之の百寺巡礼

「観心寺」（大阪府）

濃厚な官能美を感じさせ、平安密教彫刻の最高傑作として名高い、観心寺（大阪府）の本尊・如意輪観音坐像は、1年に2日間のみ開帳される秘仏。唇の朱、台座の蓮弁など1200年前の彩色を今も鮮やかに留めています。役行者開山のこの寺に、弘法大師空海が訪れたのは平安初期のこと。天から降ってきた北斗七星を祀ったとされ、国宝の金堂を囲むのは七つの星塚です。また、南北朝時代の忠節の武将、楠木正成の面影が色濃く残る寺でもあります。

「亀山御坊本徳寺」（兵庫県）

亀山本徳寺（兵庫県）は、戦国動乱のさなかに豊臣秀吉から寄進された姫路の地に移築された寺。本願寺中興の祖・蓮如を開基として、現在地からほど近くに栄えた寺内町に建立された英賀御堂が前身です。以来四百年余、「亀山御坊」の名で親しまれてきました。五木さんは、本堂の柱に新撰組隊士が残した刀傷に触れ、歴史を実感します。また、現代画家・石川ヨシ子氏による大広間の天井画を見上げ、多彩な花々の画に寺の新たな鼓動を感じました。