五木寛之の百寺巡礼
放送内容
「知恩院」~巨刹の懐に息づく念仏の源流~
東山三十六峰のひとつ華頂山の麓に伽藍を構える、巨刹・知恩院(京都府)。「“南無阿弥陀仏”と称えれば、すべての人が極楽浄土に往生できる」と説いた法然上人を宗祖とする浄土宗の総本山です。
また、家康がこの教えに深く帰依したことから、徳川家の菩提寺ともなりました。木造の楼門では日本最大といわれる三門、除夜の鐘で有名な大鐘楼、法然上人御廟など、百余の堂宇を抱く七万三千坪の広大な敷地には念仏の声が絶えません。
「百済寺」~再起の寺に生き物が躍動する~
琵琶湖の東岸、鈴鹿山脈に連なる山中に佇む三つの名刹は「湖東三山」と呼ばれます。今回紹介する百済寺(滋賀県)は、その中でも最古の寺。「湖東の小叡山」と称されるほど壮大な伽藍でしたが、織田信長にすべて焼き尽くされてしまいました。
廃寺に追い込まれながらも人々の信仰によって再建を果たした本堂は、長い石段と石垣からなる表参道の先にあります。秋には千本もの紅葉が燃え、巨大寺院の面影を残すいつもは閑寂な境内が、参拝者で賑わうのです。