五木寛之の百寺巡礼

五木寛之の百寺巡礼

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放送内容

「明王院」~川底に眠った信仰~

空海を開山とする明王院(広島県)は、芦田川を望む愛宕山の麓にあります。川の中州の一帯は、中世に瀬戸内海沿岸の交易によって栄えた「草戸千軒」という港町でしたが、やがて洪水に流され、川底の遺跡となって眠りにつきました。
明王院の国宝・五重塔は、人々の浄財による建造物です。特別に許可を得て内部に入った五木さんは、祭られた弥勒(みろく)菩薩坐像や柱に描かれた金剛曼荼羅(まんだら)に、往時の草戸千軒町と明王院のつながりや、救いを求める人々の思いを感じ取ります。

「柴又帝釈天」~下町の太陽~

映画「男はつらいよ」で知られる柴又帝釈天(東京都)の正式名称は、経栄山題経寺。日蓮宗の古刹(こさつ)です。通称は、日蓮が自ら彫ったという板彫りの帝釈天像を本尊と祭るところに由来します。帝釈堂内殿の壁面は、法華経の説話などを描く精緻な木彫で覆われ、天女たちの表情、質感に見入った五木さんは、「ルネッサンス期の彫刻に劣らない」と感嘆しました。国民的な映画の舞台の奥に、信仰に支えられた別世界が広がります。