ザ・インタビュー ~トップランナーの肖像~
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8月28日(日)ゲスト:井形慶子(雑誌編集長・作家)
作家・雑誌編集長の井形慶子。
1988年にイギリス専門雑誌「ミスター・パートナー」を創刊し、30年近くイギリスの地方に住む普通の人々の暮らしを取材してきた。「ミスター・パートナー」は300号を超え、作家としても数々のベストセラー本を出版している。
今回のインタビューの場所は、吉祥寺の小さな路地にある「THE VILLEGE STORE」。井形の選んだイギリス雑貨を集めた小さなセレクトショップだ。ここでイギリスの知恵と魅力を存分に聞く。
初めてイギリスを訪れたのは、大学生のころ。予定していた宿の予約が取れておらず、手持ちのお金もなく露頭に迷っていた時に、優しい言葉をかけてくれた中国人留学生がいた。貧しくも幸せに夢を追いかけ、充実した日々をイギリスで送る留学生の姿が心に強く残ったという。この出会いは、井形がイギリスにのめり込むきっかけにもなった。イギリスに再び足を運んだ25歳の時、井形は人生の岐路に立っていた。結婚、出産、離婚を経験し、フリーランスの編集者になったばかりのころだった。財政的にも苦しかったが、そんな中、再起をかけ、子どもを連れてイギリス旅行をすることに。お金もなく子ども連れの自分に優しい言葉をかけ、面倒を見てくれたイギリスの人たちの優しさに触れ、井形のこれまでの価値観は大きく変わった。“貧しくても人は幸せに生きることができる”と。
28歳の時、イギリスの魅力を日本に伝えたいと、わずか20万円の資金で、イギリス専門の雑誌「ミスター・パートナー」を立ち上げることを決めた。当時、日本はバブルの真っだた中。消費の時代に、“お金”にこだわらないイギリスの人の価値観を発信し続けた。
井形の著書に、こんな記述がある。「日本人は、貯蓄が1000万円あっても根底にいつも不安と焦りがある。イギリス人は、貯蓄残高に日本人ほど価値を置かない、なぜなら、彼らはお金と離れたところで、幸福を構築するすべを長い歴史の中で受け継いできているからだ。」
インタビューの中で、井形が“イギリス人が幸福を構築するすべ”として挙げたもののひとつが、よいものを大切に長く使うこと。イギリスでは、少し値が張っても、素材のいいものを買って長く愛用する方が堅実だと考えられている。それは実際にどのようなものなのか、イギリスの職人たちの手づくりの逸品を、今回井形のセレクトショップで見ることができた。
もうひとつは、住居に対する愛。新築にこだわることなく、古い家でも手入れして、長く使う。手入れすることによって、家の価値が上がり、それが将来、賃貸収入などにつながる可能性もある。だからこそ、貯蓄にこだわる必要がないのだという。しかし、日本では、新築は時を経るごとに価値が下がる。井形は、そんな日本で、中古物件の再生に挑戦。吉祥寺の築35年のマンションを、200万円でイギリス流にリフォームした。その変貌と再生後の価値とは?
さらに、幸せな老いを迎えるためにも、イギリスの知恵は不可欠だという。キーワードは「I’m so old,so I’m free.」(年を取った、だから私はフリーだ)という言葉。井形が語る、老後を幸せに生きる方法とは? 井形慶子がイギリスから学んだ幸せな生き方と価値観を語る、貴重な1時間!