昭和偉人伝
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出光佐三
2006年、ある企業が株式上場したというニュースが、日本の経済界に衝撃を与えました。その企業の名は、出光興産。明治44年の創業以来、実に100年近くにも渡る長い間、出光では、創業者の掲げた理念に基づく独自の経営方針が貫かれていたのです。
「解雇なし」「定年なし」「タイムカードなし」「労働組合なし」…今もなお、出光の経営に連綿と受け継がれる独特の社風、それを作り上げたのは、創業者であり、不世出の商売人、出光佐三でした。
面汚し、無法者、国賊 …出光佐三は、数々の悪名を商売敵から投げつけられながら、その生涯を、業界を支配する海外の石油会社への挑戦、既得権益を持つ勢力との闘いに捧げました。
彼が何よりも、経営理念の礎として掲げた言葉、それは「人間尊重」。利潤だけを追求する拝金主義とはまったくかけ離れた、「新しい商人」の姿を、佐三は追い求めていたのです。明治から大正・昭和へと移り変わる激動の時代、辛く険しいその道程を、鮮やかに駆け抜けてゆきます。
外油メジャーを驚嘆せしめた、南満州鉄道への進出。敗戦にふさぐ日本中の人々を鼓舞した「日章丸事件」…。常に、日本人の自主独立心を刺激し、勇気を与えてきた出光佐三の起こしたアクションを、関係者の証言や貴重な資料によって紹介しながら、佐三の信念であった「人間尊重」の真意を紐解いていきます。