世界の名画 ~美の迷宮への旅~
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国境を越えた最高の微笑み
ルノワール「ジャンヌ・サマリーの肖像」
フランスで最も権威のある劇団コメディ=フランセーズの若手人気女優を描いた「ジャンヌ・サマリーの肖像」。幸福の画家ルノワールの描いた肖像画の中でも最高傑作ともいわれるこの作品は観る者全てを幸せな気分にさせます。この作品が所蔵されているのは、モスクワが誇るプーシキン美術館。西ヨーロッパで描かれた絵画を主な所蔵作品とする、日本でいえば国立西洋美術館のような存在です。中でも印象派以降のフランス近代絵画のコレクションは世界でも指折りの質の高ささを誇っています。何故、ロシアにこれほどの名画があるのか?その謎を探ります。
まず最初に訪れたのはモスクワのシンボル的教会、聖ワシリー寺院。内部にぎっしりと掛けられたイコン(聖像画)を通じて、ロシアの人々にとって絵画とはどんな存在であったのか、それが西ヨーロッパの絵画の影響で、どのように変化していったのかを探ります。
続いて西ヨーロッパから積極的に絵画を買い入れたロマノフ王朝の皇帝達と大貴族達の収集活動にも目をむけます。彼らが手に入れた珠玉の名画はもちろん、ロシア屈指の美術品コレクターだったユスーポフ公爵の宮殿も紹介します。
19世紀に入るとブルジョワが力を付け、皇帝、貴族に続く新たなコレクターとなります。その代表が「ジャンヌ・サマリーの肖像」を購入したイワン・モロゾフです。彼はルノワール、ゴッホ、セザンヌなどを中心とした極めて質の高いコレクションを築き上げました。しかしロシア革命によって全てが変わります。番組の後半では、革命に翻弄されたコレクター、モロゾフの半生を追います。