世界の名画 ~美の迷宮への旅~
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人間の原点を描いた画家 ミレー 「落穂拾い」
今日の一枚は19世紀、自然と共に生きる農民を描いた、ジャン=フランソワ・ミレーの屈指の名作「落穂拾い」。
豊かな収穫を背に貧しい農婦達が落ちこぼれた麦の穂を掻き集める姿が描かれています。
ミレーは必死に落ち穂を拾う貧しい農婦を、敢えて手前に置き、人間としての尊厳を讃え光り輝く存在として描きました。
しかし、この作品は政府主催のサロンで「貧困の女神達」と批判されてしまったのです。
ミレーが生きた19世紀当時のフランスは革命に次ぐ革命の時代。産業革命によって都市に集まる労働者が急増し、社会の中心は王侯貴族から市民へと変わりつつありました。
王侯貴族は世の中が労働者に覆されるのではないかと怯えていたのです。その為、貧しい農民を描いた、この作品は社会を転覆する意思の表れと見られたのです。
それでも、保守的な美術アカデミーに抗い続け、40代に入っても評価されずにいたミレー。彼を支えたのは幼い頃、祖母の影響で手にした聖書の言葉。「お前は顔に汗を流してパンを得る。土に帰るときまで…」
働く姿こそ人間の原点であり、人間の避けられない運命。働く農民の姿は自分が描くべき原点だと、ミレーは確信したのです。
そして40代半ばで、ついに華開きます。
夕刻の鐘の音が聞こえてくるかの様な、あの名作によって。
今回の地上の旅は日本のミレーの聖地と称される山梨県甲府市を訪れます。「自然豊かで農業を大切にしている山梨にはミレーの作品こそ相応しい」その想いから生まれた山梨県立美術館には幻の作品もありました。
また、山梨の美しい自然が育んだワインを始め、ミレー作品をイメージしたフレンチも堪能します。
ミレーの作品が訴える、厳しい自然の中で真摯に働く人間の尊さ。それは自然と共に生きる日本人の心に強く響き渡ることでしょう。