世界の名画 ~美の殿堂への招待~
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忘れられた天才 ゴッホの孤独 オランダ クレラー・ミュラー美術館
うねるようなタッチと強烈な色彩で、圧倒的な存在感を放つ作品世界を創造したフィンセント・ファン・ゴッホ。今や美術史上屈指の巨人として世界に名を知られる彼も、生前はほとんど無名に近い存在でした。
ゴッホは1853年、オランダ南部の小村フロート・ズンデルトに生まれました。画商、書店員、教員、伝道師と職業を転々とした後、画家を志したのは27歳の時でした。33歳で渡ったパリでは、当時の画壇を賑わしていた印象派や、続く世代の画家たちに刺激を受けながら、画風を劇的に進化させていきます。しかし、不器用な性格のゴッホは周囲から誤解されることも多く、競争の激しい芸術の都での生活にはなじめませんでした。
その後、太陽の光を求めて向かった南仏アルルで、「夜のカフェテラス」「アルルの跳ね橋」といった傑作を含む、約200点もの作品を量産。続いて滞在したサン・レミで、あの独特のうねりを特徴とするタッチを生み、その絵は一層力強さを増していきます。そんな絶頂期を迎えた矢先の1890年、ゴッホはパリ郊外で自ら命を絶ち、37年の短い生涯を閉じるのです。画家としての活動期間は、わずか10年。売れた絵はたった1枚でした。
歴史から葬られようとしていた彼の作品が、脚光を浴びるきっかけをつくったのは、オランダに住む一人の女性でした。製鉄などで財をなした企業家の夫人ヘレーネ・ミュラーは、美術教室で知った無名のゴッホに魅了され、彼の作品の蒐集に奔走します。のちに国へ寄贈されたそのコレクションをもとに、1938年、オランダの広大な国立公園内に誕生した美の殿堂がクレラー・ミュラー美術館です。
番組では、世界二位の規模を誇るこの美術館のゴッホ・コレクションを一挙に紹介。生地フロート・ズンデルトや、傑作の舞台アルルなども訪ね、孤高の天才ゴッホの生涯に迫るとともに、死後、作品が美術界にブームを巻き起こしていく過程にも光を当てます。