世界の名画 ~美の殿堂への招待~
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フランス リヨン美術館 小さなルーブルと花の画家たち
フランス南東部に位置し、絹織物の産地として有名なリヨンは、ローマ帝国属州の首都として繁栄した古都です。神聖ローマ帝国の一部だったこともあるこの町がフランスの支配下に入ったのは、ようやく十四世紀に入ってからのこと。フランス第三の都市リヨンは、独自の歴史と文化を持っているのです。
そんな町が誇るリヨン美術館は、一地方美術館でありながら、広く美術史を見渡すことができます。ペルジーノやヴェロネーゼなどのルネサンス絵画、ルーベンスやレンブラントなどのバロック絵画など、いずれも名作がその壁を飾っているのです。
こうした名画はナポレオンによってリヨンにもたらされました。十九世紀初頭、次々と地方都市に美術館を設立していった彼は、特にリヨンに手厚く傑作を配します。優れた図案職人を育て、絹織物産業をさらに発展させようという狙いでした。
こうして創設されたリヨン美術館は、その後も美術の最新の動向にアンテナを張り、意欲的な収集活動を展開しました。その結果、様々な試みで絵画の歴史を切り開いていったフランス近代絵画の巨匠たちの作品が、第二の見どころとなっています。事件や犯罪に目を向けたフランス・ロマン派の巨匠ジェリコー、写実主義を打ち立てたクールベ、そして光にこだわった印象派のモネやルノワール。特に人工的な照明を描いた傑作、ドガの「カフェ・コンセール、アンバサドゥール」は美術館を代表する作品の一枚です。
さらにここでは、図案職人の枠に収まり切らず、芸術家として活躍した「リヨン派」の画家達の作品が数多く収蔵されています。絹織物産業と深く結びついた花の絵や、リヨンの歴史と深く結びついた、知られざる象徴主義絵画の傑作がこの町で生まれていました。
美しいリヨンの風景とともに、「小さなルーブル」と呼ばれる魅力的な美術館の名作の数々をご堪能いただきます。