世界の名画 ~美の殿堂への招待~

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ストーリー

北欧の天才ムンク 愛と死の叫び オスロ国立美術館&ムンク美術館

番組名

ノルウェーが生んだ19世紀末の世界的巨匠エドヴァルト・ムンク。彼の代名詞ともいえる傑作「叫び」は、狂気ただよう尖鋭的な表現で発表当初からセンセーションを巻き起こし、今や西洋絵画で最もよく知られた一枚となっています。しかし、知名度の高さとはうらはらに、この作品が何を表しているのかは、意外にもあまりよく知られていません。それを象徴するのが、「叫び」という題名にまつわるありがちな誤解。叫んでいるのは、中央に描かれた人物だと思っている人が多いかもしれませんが、実はそうではないのです。では、この「叫び」の真相とは一体?
謎を解く手がかりを求めて訪ねるのは、ムンクの出身地、オスロ。この町にある二つの美の殿堂、オスロ国立美術館とムンク美術館は、ムンクの作品に関して世界屈指のコレクションを誇っています。なかでもムンクを語る上で見逃せないのは、彼が心血を注いだ連作「生命のフリーズ」です。「ヴァンパイア」「マドンナ」「生のダンス」など20点以上からなるこの一連の作品群で、ムンクは愛や生の不安、死といったテーマを描き、人間存在の本質に迫ろうとしました。実はこの壮大な物語の鍵を握る一場面として描かれたのが「叫び」だったのです。5歳で母親を、14歳で姉を亡くしたムンクは、彼自身病弱だったこともあって、常に死の影に脅かされる幼少期を送りました。「病と狂気と死が、私の揺りかごを見守る黒い天使たちだった」―― 彼はのちにこう振り返っています。ムンクにとって、絵を描くことは唯一の癒しであり、救いを求める祈りにも似た行為でした。そんな生い立ちに由来する彼の苦悩や不安が一気に爆発したある日の個人的な体験が、あの「叫び」のモチーフとなっているのです。
番組では、オスロ周辺に点在する画家ゆかりの地や「叫び」の舞台を探訪。二つの美術館に収められたムンクの傑作の数々を読み解きながら、名作「叫び」の謎に迫ります。