世界の名画 ~素晴らしき美術紀行~
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フランス 心の原風景
コロー 美しき森の思い出
今日の一枚はコローの『朝、ニンフの踊り』。
風景画家の詩人と言われるコロー、その作品は、銀色に灰色を混ぜて作られた「銀灰色」の、独特の靄に包まれ、穏やかで幻想的な雰囲気を醸し出しています。
当時、産業革命によって目まぐるしい発展を見せていたパリ。生活が豊かになっていく一方、都会は喧騒に包まれるようになりました。
そんな中で、人々が求めたのがコローの描く
穏やかで美しい、フランスの田舎の風景だったのです。
フランスをはじめ、ヨーロッパ各地を巡り作品を描いたコローは「旅する画家」でした。今回の旅は、そんなコローの足跡を辿りフランス各地を巡ります。
コローはもちろん、ミレーなど多くの芸術家たちが集まり親交を深めたバルビゾン村、彼らが写生に励んだ広大なフォンテーヌブローの森、そして、コローを育んだパリ郊外の町ヴィル・ダヴレーでは、彼が多くの時間を過ごした別荘、そしていくつも作品に描いた街のシンボルの泉を訪ねます。旅の中で見えてきたのは、「コローおやじ」といわれ慕われた、画家の優しく寛大な人柄。
彼は晩年、記憶をもとに描かれた新しい風景画「抒情的風景画」。そして、画家自身の思いをモデルに投影して描いた「空想的風景画」を描きました。これらは大きな評判を呼びます。しかし、その誕生の裏にはある悲しい出来事がありました。
各地の旅でいくつもの作品を残してきたコローの体を重い病が襲ったのです。ライフワークだった屋外での制作ができなくなったコローの、追憶と心情が作品を生み出しました。
フランス風景画の先駆者コローの描く「フランス人の心の原風景」に迫ります。