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美しき出会い 知られざる東欧の旅
1 アドリア海をめぐって
元モンティ・パイソンのメンバー、マイケル・ペイリンが案内する「Michael Palin's Travel」シリーズ最新作。シリーズ前作では山と砂漠を巡ったマイケル。今回は、長期にわたり鉄のカーテンの向こう側にあった、近くて遠い存在、東ヨーロッパの国々を旅する。
マイケルにとって冷戦下の東ヨーロッパは、長い間、近くにありながら謎に包まれた地域だった。第二次世界大戦、共産主義の支配、内戦を経てやっと訪れた平和のもと、負の遺産を抱えながら、東ヨーロッパは復興の道を歩んでいる。長年の空白を埋めようと旅立ったマイケルは、自分たちの歴史と文化を大切にし、民族の誇りを心の支えにする人々の力強い暮らしを見るのだった。
旅の始まりはスロベニア国境のユリアン・アルプス高峰。雪渓を後にしたマイケルは、列車でアドリア海まで一気に下る。海岸沿いにクロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナをまわった後は、内陸のセルビアに入る。その後、再び海に戻り、クロアチアの海岸にある町から海路で最終目的地のアルバニアを目指す。
クロアチアでは、ダルメシアンの故郷ダルマチア地方、そして古い港町スプリットを訪ねる。マイケルは復興しつつあるこの国の原動力が、民族の誇りであることを痛感する。続いて花が咲き乱れるフバル島で天国を味わった後、26年前に聖母マリアが現われたというメジュゴリエで、当時マリア様を目撃した少女のひとりミリアナから話を聞く。
次に旧ユーゴスラビアだったボスニア・ヘルツェゴビナのモスタル、サラエボ、そしてセルビアの首都ベオグラードを訪ねる。分断という結果を招いた内戦は、人々の心にどんな傷を残し、生き方をどう変えたのだろう。地雷地帯で除去作業を見学したり、ボスニア人映画監督と話したりするうちに、マイケルは血塗られた戦争をこれまでとは違った視点で見るようになる。同時に復興への明るい兆しも感じるのだった。マイケルは、再び海に戻る。アドリア海の真珠と称されるクロアチアのドブロブニクの街頭で、ルネッサンス様式の壮麗な建築物を愛でながら、リュートの音色に酔いしれる。演奏するのは2006年にダウランド作品集をリリースした、エディン・カラマーゾフ。変わって、オペラの歌声を披露してくれるのは、ヨットの船長。マイケルは波にゆられながら、かつてはヨーロッパ随一の秘密主義国といわれたアルバニアに向かう。
ドュレスに上陸し、列車で首都ティラナへ。自転車に乗り、激しく行き交う車の波をよけながら果敢に走ったマイケルは、元画家のエディ・ラマ市長を訪ねる。市長は共産主義からの脱却を図ろうと、アルバニアが相当な努力をしている様を訴える。鮮やかな色で塗られた市街の建物は、そんな市長の政策の象徴といえる。最後に巡礼者たちに同行し、山の上にあるイスラム教の修道院を訪れる。山頂でアラーの神に生贄の羊をささげた後は、成功を祝う宴会で温かなもてなしを受け、民族音楽や、歴史あるバルカン地方の文化に触れる。