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東南アジア最後の秘境
―ミャンマー知られざる野生の宝庫へ―
1 ゾウの親子
ミャンマーの国土の半分以上をしめる森は、世界的に絶滅の危機にある野生動物の宝庫と考えられている。しかし、近年まで国際的に孤立していたため、実際にどのような状態にあるのかは謎に包まれていた。今回、BBCのカメラが外国人調査チームとともに、50年ぶりに知られざる森に入り、貴重な野生動物の生態に迫る。
第1回は、20世紀にその9割が姿を消したアジアゾウに焦点をあてる。最大の目標は、群れを見つけ、さらに赤ちゃんゾウの存在を確認すること。もし正常に繁殖が行われていなければ、この森にゾウの未来はないからだ。しかし、警戒心が強い野生のゾウを見つけるのは至難の業。調査チームは無人カメラを設置し撮影に挑む。
調査チームが入ったのは、アジアゾウの最後の聖域とも言われるミャンマー西部の森林地帯。野生動物カメラマンのゴードン・ブキャナンとジャスティン・エバンスは、ゾウが水を飲みにくる谷間と、餌場がある尾根(おね)で群れを探す。調査の大きな目的は、世界的に貴重なこの森を保護するようミャンマー政府を説得すること。そのためにアジアゾウが正常に生息・繁殖している証拠をカメラに収め、この森の大切さを訴えたいと考えている。
撮影チームは早速、大きな足跡やフンを発見するが、肝心の姿は見えない。ゾウは非常に警戒心が強いため、少しでも異常な気配を感じた場所には近づかないのだ。彼らを驚かして反撃を受けるのも非常に危険だ。調査は慎重に進められる。最初にその姿をとらえたのは無人カメラだった。そこには、木に設置されたカメラやケーブルに興味を示し、もぎ取ろうとするゾウの姿が映っていた。好奇心があるというのは、知能が高い証拠だ。しかし映っていたのは2頭の大人のオスのみだった。森の開拓者とも呼ばれているゾウ。彼らが食べる野生の実には種も含まれており、あちこちに落とすフンは森に種をまき、肥料の役割を果たす。また、彼らが木や植物をなぎ倒した場所には、光がふんだんに差し込み、新たな植物が育つ。ゾウは豊かな森をつくり、その森がゾウを守っているのだ。森を保護していかなければ、そこに暮らす野生動物たちも近い将来には消えてしまう。
ゴードンは、地上30メートルの木の上に小屋をつくり、二日間こもって張り込んだ。調査のタイムリミットまで残りわずかとなった時、20頭ほどの群れを見つけ、のびのびと暮らす姿をカメラに収めることに成功。一方ジャスティンも、この群れの中で、大事に守られている2頭の赤ちゃんゾウを撮影することができた。この森でゾウは繁殖していたのだ。