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ストーリー

野生のアジアゾウ その知られざる生態

インドの南に浮かぶ島国、スリランカ。そこに生息しているアジアゾウの生態に迫る。舞台となるのは、スリランカ南部に位置するウダ・ワラウェ国立公園。手つかずの自然が残り、希少なアジアゾウが群れをなして生活している。そこでは、野生のゾウの興味深い行動を見ることができる。例えば、鼻を使って持ち上げた木の枝を使い、近づいてくる小さな虫を追い払っている様子からは、知的な動物であることが分かる。また、公園の中には、母親とはぐれた子ゾウを保護する施設がある。そうしたゾウたちを自然に帰すことが施設の目標なのだが、アジアゾウの習性はよく知られておらず、その試みがうまくいくとは限らない。果たして、人間に助けられたゾウは、再び野生に戻ることはできるのだろうか?
美しい自然の中で暮らす野生のゾウの様子や、母親とはぐれたゾウを救うための取り組みを追いながら、これまであまり知られていないアジアゾウの姿を明らかにしていく。

インドの南に浮かぶ島国、スリランカ。そこに生息しているアジアゾウの生態に迫っていく。スリランカ南部に位置するウダ・ワラウェ国立公園には、野生のアジアゾウが数多く暮らしている。そこでは、ゾウの興味深い行動を目にすることができる。例えば、草を食べる前に足で泥を払っている様子や、鼻を使って持ち上げた木の枝で近づいてくる虫を追い払っている姿を見ると、知的な動物であることが分かる。また、アジアゾウは少数のグループを作り、その群れはメスと子どもだけで構成される。子どもはそうした中で育つことによって、ゾウの社会の仕組みを学んでいくのだ。
そして、公園内には、母親とはぐれてしまった子どものゾウを保護する施設がある。そこでの目標は、ゾウたちを自然に帰すこと。けがの治療をしたり、食料を与えたりはしても、人間との接触はなるべく避けるようにしている。なぜなら、あまりにも人間に慣れてしまうと、自然の中で生きていくことが難しくなるからだ。
 そんな中で常に飼育員の助けを必要としている一頭がいる。ナマルと呼ばれる2歳半のオスのゾウだ。保護された時から足に大きな傷を負っていて、人間の手助けなしでは生活することができない状態だ。
再び野生のゾウの様子を見に行くと、ある群れでは、赤ちゃんが誕生していた。しかし保護施設で育ち、自然に戻されたメスが母親を追いやり、赤ちゃんを奪ってしまった。親のいない施設では、年上のゾウが年下の世話をしているため、そのメスにとっては、施設でしていたのと同じようにして世話をしようとしただけだったのだ。保護施設で育ったゾウが野生に帰ると、このようなひずみが出ることもある。これまで15年間の間で、施設から元の環境へと戻った象はおよそ90頭。その多くが今も元気に暮らしている。 世界でも貴重な野生のアジアゾウの様子、そして親とはぐれてしまった子ゾウを保護して自然に帰そうとしている人々の取り組みを追う。