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人間を超えた!? 賢い動物たち 前編
動物の知能に関する研究は、生物学において最も注目されている分野の1つ。近年、研究者たちの独創的な実験により、ヒトに次いで高い知能を持つとされるチンパンジーやオランウータンはもちろんのこと、無脊椎動物のタコにいたるまで、さまざまな動物の驚くべき能力が明らかになってきた。
前編では動物の記憶力・学習能力に注目し、素晴らしい知力を発揮する動物たちを紹介する。道具を使う、何かを試すことで学習し知識に変える、優れた方向感覚で広大な地域を認識する、創造力をはたらかせオリジナルの技を生み出す、人間が作った仕掛けをかいくぐる…インコとチンパンジーの実験映像をはじめ、私たちの想像を超えた、優れた知力を見ることができる。動物たちの記憶容量は、人間に近づいているか、あるいは既に上回っているかもしれない。
まず道具を使う動物の検証では、オランウータンが水の力を使ってピーナッツを手に入れ、ゴイサギがパンくずを釣り餌にして魚を捕まえる姿を紹介。また、カケスが2種類の石を判別して使う能力は、人間の7歳児と同等であることが証明される。生物が賢くなるために必要なのは「記憶力」。高い方向感覚を持つ動物の代表格であり、2度の世界大戦で活躍した伝書バトの能力を検証するため、GPS追跡装置を使った実験が行われた。その結果、ハトの方向感覚は持って生まれたものではなく、学習によって養われ記憶されたものだと判明する。広範囲にわたる水場や餌場を記憶できるアフリカゾウの姿も紹介。
知性に必要な要素である「創造力」を持つのは人間だけではない。イルカはオリジナルの技を考え出し、ミズダコは人間が作った仕掛けを利用して生きている。また、コガラの実験では、先祖が暮らした場所が過酷な環境であるほど創造力にあふれるDNAが受け継がれ、難問を解決する能力が発達していることが証明される。
最後に、「学習」という環境を与えることで賢くなった天才動物たちを取り上げる。訓練によって数字とアルファベットを識別できるようになったアシカや、死亡時には新聞記事にもなったインコの一種であるヨウムのアレックスを紹介。アレックスは25年間にわたり学習を続け、物体を認識し、数や色、素材をも識別できるようになったという。さらに、世界トップクラスの知能を持つチンパンジーである、京都大学にいるアユムに注目。アユムはほんのわずかな時間で、パネル上の数字の位置を記憶できる能力がある。これは人間で実験してもできない離れ業で、その能力に関していえば、はるかに人間を上回っている。私たちの想像を超えた動物の知力に驚かされると同時に、敬意を表し、人間が最も優れた生き物ではないと認識させられる。