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プラネット・ツアー
―地球が文明を作った― 3 風に乗って
私たちの暮らす地球は、想像をはるかに超えた力に満ちている。人類の歴史に影響を与えたこの偉大な力を、迫力ある映像とともに検証するシリーズ。第3回目のテーマは"風"。人類の運命を左右してきた風の仕組みと歴史を案内する。
サハラ砂漠の小さな町シンゲッティの繁栄と衰退。ヨーロッパ諸国が資源争奪戦を繰り広げた大航海時代。その結果、アジア・アフリカ諸国にもたらされた植民地支配や奴隷貿易の悲劇。肥沃(ひよく)な土壌を背景に花開いた中国の高度な文明や農耕文化。一方、太古から人類が存在していたにもかかわらず、農業が根付かなかったオーストラリアの不毛の大地。アジアの島々へ進出した人類の祖先が挑んだであろう広大な太平洋への航海。ある時期に起きた、アメリカ先住民族の文化やマヤ文明の衰退。そのすべての運命を左右したのは、風の力であった。気象予測が可能となった今も、私たちの生活が風の支配を免れることはない。
今回は、風の力が人類の歴史に与えた影響を振り返る。
かつてサハラ砂漠交易ルートの拠点として栄えたシンゲッティ。その繁栄は風が作り出した砂漠によってもたらされ、その衰退もまた風を利用した航海貿易の隆盛が原因だった。大航海時代が幕を開けた15世紀。地球規模の風の法則性に気付いたコロンブスが、様々な航海ルートを開拓する。風はヨーロッパに富をもたらした反面、アジア・アフリカ諸国に植民地支配や奴隷貿易という悲劇を生んだ。
長い歴史を誇る中国の繁栄は、まさに風のたまものと言えよう。風の運んだ砂ぼこりが肥沃(ひよく)な黄土高原を作り、黄河文明や農耕文化の礎となったからだ。逆に風に苦しんだのは、オーストラリアだろう。風の侵食で土地はやせ、空気は乾燥し、大陸は広大な不毛地帯と化した。
海に目を向けると、海水温度の上昇はハリケーンやエルニーニョ現象を引き起こす。エルニーニョ現象は長期にわたり風向きを変える力を持つ。そのため人類の祖先が太平洋を渡ってアジアの島々に進出する際のカギとなったという説がある。しかし、一方では陸地に大干ばつなどの異常気象をもたらし、アメリカ先住民の文化やマヤ文明を衰退させたとも言われている。
風は人類の歴史に深い影響を与え、今も生活を支配している。私たちの運命は、まさに風まかせなのかもしれない。