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幻のライオン ~アフリカ・ナミブ砂漠に出現~
1980年代、ナミビアの大砂漠から一斉に姿を消したライオンたちが、近年、再び出没し始めた。過酷な自然環境の中で、彼らはどのように生き延びつつあるのだろうか? 砂漠のライオンに魅せられた生物学者フリップ・スタンダーが、1つの群れを追いかけながら、謎に包まれたその生態を解き明かす。
ナミビア共和国の大西洋岸に伸びる広大なナミブ砂漠。この地に生息するライオンは、1980年代、アフリカを襲った大干ばつ以後、こつ然と姿を消した。エサが乏しくなり、家畜を狙い始めたため、住民たちが手当たり次第に銃殺したのである。しかし近年、ライオンの生息数は急激な回復を見せ始めた。生物学者フリップ・スタンダーは、砂漠に適応して生きる彼らの追跡調査を開始する。
植物すらまばらな灼熱の荒野に生きるライオンには、サバンナのライオンと異なる興味深い特徴が多い。第一に、彼らは大きな群れではなく、少数のグループで行動する。狩りも成獣から教わるのではなく、子供の頃から試行錯誤しつつ自ら体得して行く。
しかし、砂漠は気候の変動が激しく、干ばつによるエサの枯渇は避けられない。ライオンの生存を左右するこの問題を解決すると見られるのが、大西洋岸のフリア岬に存在するオットセイのコロニーである。かつてライオンはここをエサ場としていたが、姿を消していた20年間で、その知識は失われてしまった。彼らが再び岬へ進出し、豊富な獲物の存在に気付くことは、次の干ばつを生き延びる大きなカギとなるだろう。 フリップが出会った若い2頭のメスライオンは、互いに協力しながら、戦略的に獲物を倒す術を身に付けつつあった。その母親は、若い頃、村人が飼育する牛を襲撃し、辛うじて銃殺を免れた経験を持つが、GPS機能付きの首輪を装着して動向を追った結果、現在では人間の集落に接近してもトラブルを起こすことなく行動していることが判明。住民側からも、ライオンを重要な観光資源とみなす動きが出てきており、両者の共存には新たな希望が見え始めている。
砂漠のライオンが、アンゴラから南アフリカに至るスケルトン・コースト(骸骨海岸)一帯に定着する日が訪れることを、フリップは夢見ている。