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地中海 6つの旅 ~大地の歴史をさぐる~
第1回 大地の裂け目
今週は、私たちの足元、大地の下で働いている地質学的な力に着目し、地中海沿岸の歴史や文化を見直し、謎を解き明かしていくシリーズを送る。第一夜のテーマは、大地の裂け目。
地中海という世界的に人気のある観光地は、実は地震の危険地帯でもある。地質学者のイアン・スチュアートは、地震の多発地帯を巡りながら、大地の裂け目がその地域にどんな影響を及ぼしたのかを見ていく。トルコ、パムッカレの石灰棚の美しい景観、聖書に書かれたソドムとゴムラの滅亡、古代ローマ帝国の滅亡、火山灰に埋まったギリシャのサントリーニ島───これらの事件や事象は、すべて大地の裂け目がもたらしたものだったという彼の仮説は、見る者の知的好奇心を大いに刺激する。進行役のイアンは、ビスケットを使って地震のメカニズムを説明するなど、地質学をわかりやすく紹介。彼は元々子役として活躍したキャリアがあり、大学で教える今も「講義はパフォーマンスだ」と考えているという。パムッカレでは温泉に入り、死海では泥マッサージを受け、言葉の通じない観光客に突撃インタビューを試みるなど、「こんな先生の授業を受けてみたい」と思わせるような、ユニークな進行ぶりだ。地中海の美しく、時に峻厳な自然景観の映像も一見の価値がある。
地質学者のイアン・スチュアート博士が地中海の旅に出る。旅の目的は観光ではなく、大地の下で働く力に着目して世界有数の観光地・地中海を見直すこと。今回は、地中海地方を縦横に走る断層や大地の裂け目に着目して旅を進める。 まずは地中海有数の地震多発地帯であるトルコから。地震の断層は危険だが、恵みももたらしてくれる。地中からさまざまな鉱物資源や温泉が、断層を通って上がってくる。パムッカレの美しい石灰棚も、断層を通り石灰分たっぷりの温泉が湧き出した結果できたものだ。
続いてイアンは、聖書に書かれたソドムとゴムラ滅亡の謎を追い、ヨルダンの死海へと移動する。
この付近の断層はアスファルトをもたらした。ソドムとゴムラの市民は、アスファルトを採取するために死海のほとりに住んだのではないかと仮説を立てる。地震と液状化現象、それに断層から噴き上げるメタンガスの炎が両都市を滅亡させたというのが彼の説明である。
イアンは、古代ローマ帝国滅亡の真相にも迫る。ローマでは、ブドウ果汁を鉛製の鍋で煮詰めたシロップがワインの添加物や甘味料として多用されていたが、その中には有害な鉛が大量に溶け出していた。そのため飲酒と美食にふけったローマの上流階級は軒並み鉛中毒に陥り、不妊や精神異常が進んだのだと、イアンは主張する。旅の最後はギリシャのサントリーニ島だ。この島の都市・アクロティリも、ポンペイと同様、火山灰に埋まっていた。ポンペイと違うのは、廃墟に遺体や貴重品がなかったことだ。地層を調べると、噴火の初期に軽石が噴き出し、少ししてから大噴火が起きていたことが分かる。住民はその警告を受け止め、惨事の前に非難していたのだ。