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ドイツ・おとぎの古城に秘められた物語
ドイツ、バイエルン州の高台にそびえ立つノイシュバンシュタイン城。まるでおとぎ話のように美しいことで有名なこの城は、ある歴史的人物によって、19世紀に建てられたものだ。それは若くして王座につき、美と芸術を愛した男、ルートヴィヒ2世。ハンサムで皆に愛され、「ドイツの心」を築いたと言われるバイエルンの国王だ。
彼はほかにもロマンチックな城を残している。ベルサイユ宮殿の影響を色濃く受けたリンダーホーフ城やヘレンキームゼー城は、現在でも指折りの美しい建築物として賞賛されている。
番組では、建築史学者のダン・クルックシャンがそうした美しい古城の数々を訪れ、歴史をひもといていく。そこには、理想の世界を追い求め続けた男の、光と影の物語が秘められていた。
まず訪れるのは、山沿いの湖畔にそびえ立つホーエンシュバンガウ城。ここはルートヴィヒ2世が幼少期を過ごした場所。騎士道精神を大事にしていた父のマクシミリアン2世は、城の至る所にドイツの伝説にまつわる絵を飾った。そこで育ったルートヴィヒは英雄や騎士たちの物語に心を奪われることになる。
18歳で父がこの世を去り、王位につくことになったルートヴィヒ。芸術を愛する彼がまず行ったのは、作曲家・ワーグナーを招待すること。ルートヴィヒは、ワーグナーのオペラ「ローエングリン」に夢中だったのだ。そして、その世界観を再現するかのように作られたのが、ノイシュバンシュタイン城だ。高台に建てられた城は、完成に20年もかかったという。舞台美術家による設計で、華やかな装飾はまるで舞台装置のようだが、ドーム型の高い天井には近代的な技術が使われている。
その後、戦争に巻き込まれ、王としての力も国力も衰え失意のルートヴィヒは、理想の世界を築くように新たな城作りに没頭する。そうしてリンダーホーフ城が建てられた。この城には、彼にとって理想の王、ルイ14世の像や絵などが飾られている。美しく豪華な装飾を施すことで、自分も持っていると信じた「力」を示そうとしたのだ。庭にはワーグナーの「タンホイザー」に登場するビーナスの洞窟を再現。少し離れた場所にはアラブ様式の金色の建物があり、中にはくじゃくの彫刻が飾られている。
やがてドイツはプロイセン王を皇帝として統一された。それは、ルートヴィヒの主権が奪われることを意味する。絶望の中で彼は敬愛するルイ14世のベルサイユ宮殿を模した城、ヘレンキームゼー城の建築に着手する。ダイニングに飾られている大きな花の美術品や豪華なシャンデリアはマイセンの磁器。地下には大きな奈落があり、ダイニングテーブルが滑車で上げ下げできるようになっている。しかし、ルートヴィヒ2世はその完成を前に、謎の死を遂げることになったのだった…。