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キリスト3つの名画の謎 ~その誕生に隠された真実~
第3部 ピエロ・デッラ・フランチェスカ「キリストの復活」
15世紀半ばに描かれたピエロ・デッラ・フランチェスカの「キリストの復活」は、イタリア南トスカーナの小さな街・サンセポルクロにあるフレスコ画である。透視画法を駆使した技法はルネッサンス初期の革新的なもので、現代の絵画に通じている。この作品は、一度は人気がなくなり石膏で白く塗りつぶされたものの、19世紀になって剥がれ落ちた石膏の下から自力で復活し再び人気を取り戻した。サンセポルクロの人々がこよなく愛するこの作品は、街のシンボルであり、守り神でもあった。第二次世界大戦中、この街が砲火を逃れたのはこの作品のおかげである。イギリス人小説家オルダス・ハックスリーが「世界で最も素晴らしい絵」と評したピエロの「キリストの復活」。番組では、現在も人々の心を捕らえて離さないその作品の魅力に迫る。
ピエロ・デッラ・フランチェスカの「キリストの復活」は、素晴らしい宗教画といわれる作品である。ピエロ・デッラ・フランチェスカは、石棺のふちに片足をかけ直立しているキリストを描いている。キリストはピンク色の死装束を身にまとい、右手には、死に打ち勝ったことを象徴する白地に赤の十字架が描かれた旗を持っている。
キリストは理想化して描かれておらず、脇腹からは血がしたたり落ち、上げた左足によって腹部にはしわが寄っている。キリストの顔は特に衝撃的で、じっと見つめる目の下にできたたるみは、彼が寝ていないことを示し、鼻はぺちゃんこで、髭は手入れがされない。「世界で最も素晴らしい絵」と評した作家のオルダス・ハクスリーは、それはキリストの「肉体的、知性的な力」であると語っている。
ピエロは寝ている兵士達を前景に描いている。一番右のバランスの取れていない人物は、転びそうに描かれている。様々なポーズで兵士達を描くことで、彼らがキリストの存在に気付いていないことをあらわしている。
また、第二次世界大戦中、この絵がサンセポルクロの街を連合軍の砲火から守ったという驚くべき事実もある。