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モンスター ~人類が出会った驚異たち~ 炎との戦い
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今から約65000年前のオーストラリアは、雷が落ちると平野で火事が起こる非常に乾燥した土地だった。そこに移り住んできた人類――先住民族・アボリジニの祖先――にとって、食料、とりわけ水の確保は死活問題だったが、長いときには何年も降らない雨はあてにならず、確かな水源を探し出せるかどうかが生死の分かれ目となった。
しかし、水を必要としているのは人間だけではなかった。水場には、これまで見たこともないような動物が現れることもあった。その中にはおとなしい草食動物もいたが、巨大な爬虫類、メガラニアなどのモンスターは人類にとって大きな脅威となった。その歯には毒性のバクテリアが詰まっており、ひと噛みされれば死に至るのは確実だった。また、人間が、川に生息する体長7メートルにもなるイリエワニの餌食になることもあった。生き延びるために水は必要だったが、水を飲むのは命がけの行為だったのだ。
いかにしてモンスターから身を守りながら水や食料を得るか。考え抜いた末、人類は自ら平野に火を放つようになった。変温動物である爬虫類は、早朝はまだ体が温まっておらず、動きが緩慢である。その時間帯を狙って火を放ち、モンスターたちを焼き殺したのである。また、焼け跡に草の新芽が生えてくると、カンガルーなどの草食動物がそれを食べにやってきた。カンガルーは当時の人々の貴重な食料だったので、野焼きは一石二鳥だった。
こうして、火は強力な武器であると同時に、便利な道具だと気づいた人類は、次々と野に火を放ち、オーストラリアの大地を、自分たちの都合の良いように変えていった。しかし、長い年月に渡って広範囲で行われた野焼きは、オーストラリアの生態系に大きな影響を与えてしまった。