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グラディエーター 真実の物語
SFや壮大なスペクタクル、人間ドラマや歴史超大作まで、映画はいつも人々の心をつかみ、楽しませてくれるもの。しかし、映画に描かれる世界は完全なる作り話なのだろうか? このシリーズでは、空前の大ヒットとなった映画から毎回1つの作品に焦点を当て、映画の本編シーンを紹介しながら、実在した人物や歴史的背景、科学的な研究結果を検証し、隠された真実を探っていく。
第4回は、1人の男が復しゅうのために剣闘士となり、皇帝を破滅へと導く「グラディエーター」。円形闘技場で死ぬまで闘いを命じられた古代ローマの剣闘士たちの境遇や、生活環境、剣術の訓練などを検証しながら、その死闘の模様を再現する。また、実在した皇帝コモドゥスの、映画よりもはるかに残忍な人物像も明かし、古代ローマ世界の実像を深く掘り下げていく。
アカデミー賞作品賞ほか数々の賞に輝いた「グラディエーター」。“グラディエーター”とは、古代ローマの円形闘技場で、群衆を喜ばせるために殺し合いを見せた剣闘士のこと。物語は、ローマ皇帝の旧友であった主人公が奴隷(どれい)に身分を落とし、やがて1人の剣闘士となり皇帝を破滅に導くというストーリー。映画に登場する中心人物は、ほとんどが実在した歴史上の人物で、残忍なコモドゥス帝をはじめ、彼の父親マルクス・アウレリウス帝、さらに今もローマ帝国跡地に点在する闘技場や、そこで生死をかけて戦った剣闘士たちもいた。歴史学者の意見や史実などから検証したところ、主人公マキシマスにあたる人物こそいないものの、真実は映画よりもはるかにすさまじいものだった。
古代ローマ人にとっての美徳は、死をもいとわぬ勇者をたたえること。彼らは、剣闘士が流血しながら死んでいく姿を楽しむために闘技場へと詰めかけた。興行主たちは、戦争で獲得した奴隷(どれい)や捕虜に栄養価の高い食事を与えて剣術の特訓を行ない、それぞれが“戦う商品”として得意技を持つスター剣闘士へと作り上げた。復元されたよろいやかぶとなどの装備品の研究者と、格闘の専門家と共に、剣闘士たちの戦いを再現し、興行主が観客を喜ばせるためにどのような工夫を凝らしていたかを紹介する。
さらに映画にも登場する、実在した皇帝コモドゥスの残忍な人物像にも迫る。権力者への強奪と殺りく、さらに自ら闘技場に立ち剣闘士たちをも殺害した皇帝が、屈辱的な最期を遂げたとされる浴室を訪れる。
古代ローマに散った剣闘士の世界。そして、映画では決して語ることができなかった、実在したローマ皇帝の常軌を逸した人物像など、恐ろしいローマ社会の全容を検証する。