百年名家~築100年の家を訪ねる旅~

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京都・亀岡 ~残された歴史をつなぐ心旅~

3年目を迎える今回の『百年名家』は、京都・亀岡。

京都・亀岡の町は、明智光秀が1577年に亀山城築城とともに、城下町を築いたことが礎になっています。城下には3重の堀が張り巡らされ、外堀の外周に町家が広がっていました。現在では、京都や大阪のベッドタウンの色彩が色濃くなっています。

京都嵯峨野から、トロッコ電車で揺られること約30分。終点の「トロッコ亀岡駅」にやって来た2人は、駅前で観光馬車を見つけます。これは「京馬車」という観光馬車で、保津川下りの乗船場まで運行しています。案内してくれるのは、この地に40年近く住むアメリカ人東洋研究家のアレックス・カーさん。古民家再生家としても有名で、ここ亀岡には、古民家を再生した自宅もあるのだとか。

最初に訪れたのはアレックスさんおすすめの「穴太寺(あなおじ)」。西国三十三所21番札所のお寺で、創建は飛鳥時代の705年。まずは「円応院」と呼ばれる僧侶の住居棟を拝見しました。円応院は1677年の建物で、台所にあたる「庫裏(くり)」と、居室にあたる「書院」に分けられます。庫裏を拝見した二人は、当番組でも最大級の梁を発見、さらに書院では、見たこともない重厚な欄間に驚きます。そして書院の奥の、多宝塔を借景とした美しい庭園を堪能した2人は、いよいよ1735年(享保20)に建てられたという本堂へ。そこには、わが国でも珍しい等身大の涅槃仏(ねはんぶつ)があり、その穏やかな表情と姿に、心癒されます。

続いて向かったのはとある料理店。土塀沿いの道は、まさにそのまま江戸時代。多くの時代劇がロケ地に使用したそうです。しかも代々続く弓道の宗家で、庭の奥にはかつて武芸の修練に使われた広場が残されていました。また、鎧兜、駕籠、陣笠、大筒などや多数の古文書も残されており、京都に残る武家屋敷として大変貴重なお宅です。

また、城下町亀岡は古い町家も何軒か残されています。その中の1軒の酒造を訪れました。創業130年を誇る酒造の5代目は、女性の杜氏。創業当時のままに残された仕込み蔵は、今も現役で、使い込まれた柱や梁が、独特の"蔵の味"を決めるのだとか。

次に2人は亀岡でも貴重な江戸町家「村上家住宅」を訪れました。村上家は、かつて油を扱っていた商家。典型的な妻入り町家で、妻部分には小さな庇が施され、独特の外観を作り上げています。店舗には、かつて油を量り売りしていた壺と杓子がそのまま残されています。亀岡の商家を今に留める村上家住宅の中でも、最大の見どころは中庭。"近代日本庭園の先駆者"と謳われた庭師、 小川冶兵衛の作です。今もなお住み続けることの大切さを再認識した2人でした。

旅の最後に訪れたのは、古い神社の敷地内に佇む小さな庵、アレックスさんの自宅です。築300年以上の建物で、もともと尼寺だった建物をこの地に移築したと伝えられています。その後、長い間空き家となっていたものをアレックスさんが借り受け、その後少しずつ修正を施して、現在では素敵な空間に生まれ変わっています。いま、姿を消しつつある亀岡の町屋。しかしその一方で古民家を残そうという市民活動も以前に比べると活発になったと、アレックスさんは言います。小さな働きかけが徐々に実を結んでいく…そう感じた2人でした。

今回は、家と歴史を守る人々の様々な思いに触れた旅でした。