君の体験談?
―そう、実話だよ。
監督は君が?
―そうさ。お気に入りのビデオだ。
子供の頃、父が大ファンだった影響でポルシェ・カレーラに憧れてた。
見るたびに、目がクギ付けになって溜息をついてたよ。
だからビデオの冒頭は幼い頃の僕で、大人になって金持ちになっても、
やっぱりカレーラに夢中という設定なんだ。
ビデオ監督は、これが初めて?
―いや、監督したのは「Yalla Habibi」が最初で、
ドバイで撮影をした。これまでに作ったビデオの数は、
全部で12本になる。でも自分で監督したのはこの2本で、
「Africa」では共同監督を務めた。
今のビデオには空中から撮影した映像が数秒間入ってたし、
予算がかかっているね。
そう、ヘリコプターから撮影したんだ。僕も乗ってた。
君も?
―そうさ。小さいヘリだけど…
ごく数秒間の空中映像というのがいいね。
長すぎると逆効果だ。
―そう、ダレてしまう。飽くまでも制作の質にこだわって、
予算をかけてることがわかる映像にしたんだ。
なかなか賢い策だね。
―もちろん。僕は導入部分の美しいビデオが好きだから、
今回もこだわったんだ。
「Yalla Habibi」もそうだけど、僕のほとんどのビデオは
演技しているシーンからスタートしてる。
将来は俳優になるのが夢だから、
そういう自分の願望を込めて演技のシーンを取り入れてるんだ。
演技シーンはどんなに小さくてもいいから、
ストーリーを語っているような映像を作りたい。
ただの音楽ビデオではなく、
その曲がどういう内容なのかを表現する
ストーリー性のある映像にしたいんだ。
それって、80年代のプリンスに通じるものがあるね。
彼はビデオ監督を務め、すべての楽器も自分でこなしてた。
彼はスタジオで全部を仕切ってた。
すべて自分でやってたよ。
―僕もまさにそんな感じさ。
彼のように完璧主義?
―そうさ。完璧主義者というのは、
ファンに自分の本当の姿を知ってもらいたいわけで、
僕もリアルな表現でファンに向き合ってる。
自分の中にある本物のメッセージをファンに提供したいから、
第三者からの影響を一切受けないように心掛けてる。
それこそが完璧主義というものだよ。
かなり多忙のようだけど、君は忙しいのが好きなんだね?
―そのとおり。よくわかってるね。
どうやってリラックスしてるの?
―正直なところ、最近は飛行機の中だけがリラックスできる空間なんだ。
飛行機に乗ったら、とにかく寝る。忙し過ぎてリラックスする暇がないし、
2日ほどオフがあっても疲れて寝てるだけだよ。
そういう人を何人か知ってるよ。
―1週間ほど休みを取ってビーチなんかへ行きたいけど、
忙し過ぎて今はムリなんだ。
特にキャリアに追い風が吹いている時は、そのチャンスを無駄にはできない。
もし休んでしまったら、他のアーティストに追い越されるのがオチだからね。
君の描くキャリアは、音楽だけにとどまっていないよね?
―音楽の中には、当然ミュージック・ビデオも含まれる。
だから、柱は音楽と映像だね。その2つが僕のキャリアの中心だ。
プロモーション活動は楽しい?
―好きだよ。いろいろな国を訪問できるし、たくさんの人にも会えるからね。
それに音楽を通じて、僕自身のキャリア・ストーリーを多くの人たちに伝えられる。
ずっと夢に見てきたことだし、最高の気分だよ。
だけど楽しい一方で、体力はかなり消耗する。
だから母からは、「とにかく食べなさい」と言われてるんだ。
日本でも、しっかり食べてるよ。ワサビ以外はね。
カール、ありがとう。
―こちらこそ。
時間をありがとう。
―呼んでくれてありがとう。
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