辰巳琢郎の家物語 リモデル★きらり
  • トップページ
  • バックナンバー
  • contents3
  • contents4

バックナンバー

国宝のあるお寺の蔵を住まいに変えた飛騨の家

岐阜県高山市は、東京都とほぼ同じ面積を誇る日本一広い市町村。遠くにはまだ雪を頂く北アルプスの山々を望み、山あいの豊かな緑はどこか懐かしさを感じさせてくれます。
今回訪ねたのは、そんな飛騨高山で600年以上の歴史を持つお寺、安国寺です。こちらにある経蔵は、飛騨地方で唯一国宝に指定された大変貴重なもの。そんな国宝を代々守っているのが住職のHさんです。Hさんは奥様とともに本堂横の庫裏で暮らしていましたが、将来お寺を副住職の息子さんに譲る時に備え、新たな住まいを考えていました。お寺の敷地内には、築100年を超える土蔵がありましたが、採光の確保が難しく、また水道設備も整っておらず、住環境が整っていませんでした。しかし、古いものが持つ安心感が好きだというHさんご夫妻は、「飛騨の匠」の技が残るこの土蔵をリモデルして暮らすことを決意。代々受け継がれてきたお寺や土蔵の歴史と、現代を生きるご夫妻の暮らしが調和した、まるでヨーロッパの山小屋のようなお宅をご紹介します。
古くは寺に納められた年貢が置かれていたというこの土蔵。食物の保存を主な役割として作られているため、出入口以外に窓は一つしかなく、昼でも暗いことが問題でした。そこでまずは蔵の壁を抜き、開口部を増やすことにしたのです。土が厚く塗られた壁は、通常の住宅の倍ほどの厚みがあり、夏や冬でも蔵の温度をほぼ一定に保ってくれます。さらに生活の中心となるリビングダイニングには吹き抜けを設け、一階と二階の空気循環を促したことで、寒さが厳しい飛騨地方の冬でも暖房機器ひとつで十分過ごせるようになりました。
「飛騨の匠」の技もしっかりと残っていました。蔵を支える大黒柱には四方鎌継ぎという技法が用いられてます。柱の途中で木を継ぐことで、痛んだ部分を取り替えられるようにし、蔵を長持ちさせる工夫です。また、壁には汚れに強く、手入れがしやすいフランス漆喰を塗りました。快適な生活空間を実現しつつ、蔵の趣も大切に残しています。
長い歴史を経て受け継がれたものを、次の世代へしっかりと伝える。Hさんご夫妻のそんな気持ちが実現させた、素敵なリモデルでした。

 

設計担当:レオイ
http://www.leoi.co.jp/

 
 
 
 

【平面図】

■1階

Before

After

Before After

■2階

Before

After

Before After