辰巳琢郎の家物語 リモデル★きらり
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壁が動いてONとOFFをスイッチできる家

渋谷と横浜を結ぶ人気の路線、東急東横線の学芸大学駅。駅名の由来となった学芸大学は半世紀ほど前に移転しましたが、今も変わらぬ名前で親しまれるこの街には、豊かな緑に囲まれた閑静な住宅街が広がっています。
今回訪ねるK邸は、そんな住宅街の一角に建つ低層マンションの3階部分。こちらには、今回のリモデルを担当した建築家である奥様が、ご主人とお二人でお住まいです。ご主人が仕事に出ている日中は、奥様の建築事務所として自宅を使うことを考えていましたが、ご主人は仕事の雰囲気を家庭内に持ち込んで欲しくありませんでした。もともとマンションの構造上、壁を壊して間取りを変更することができなかったK邸。限られた条件の中でも仕事とプライベートを切り替えるための、奥様とっておきのアイデアで、一つの部屋の中に二つの空間を共存させることに成功した、驚きのリモデルをご紹介します。
大きな窓から差し込む日差しが心地よいダイニングには、2.4メートルの長さがあるテーブルが部屋の中央に置かれています。ご友人たちが集まり、パーティーを開けるようにと奥様が設計したこのテーブルは、奥様の作業スペースとしても使われます。日常生活と仕事が同じ空間で行われるK邸。奥様が仕事モードへとスイッチを切り替える為の装置が、ダイニングの壁に隠されていました。杉板が貼られた壁は、なんと可動式になっており、手前に動かすことで部屋を仕切ることができるのです。壁の内側には、奥様が仕事で使う為の資料が並んでおり、壁を動かして生まれた空間が、仕事部屋になるのです。ご主人が帰宅すれば、壁を元に戻すだけで簡単にプライベート空間へと戻ります。
建物の北側には、奥様のオフィスと書斎が並んでいます。このふたつの部屋を仕切る壁にも秘密がありました。オフィスの壁にある本棚を押すと、寝室側の壁が扉のように開き、本棚があったところが開口部となって、オフィスと寝室が繋がるのです。開口部は腰をかけやすい高さに設計されており、互いの部屋同士のコミュニケーションもとりやすいようなっています。
時間帯や目的によって間取りを変えることで、気持ちの切り替えがしやすくなり、生活の質が向上したとおっしゃるKさんご夫妻。穏やかな時間が流れるK邸には、リモデルの新たな可能性が詰まっていました。

設計担当:しばたゆうこ事務所
http://yukoshibata.com/

 
 
 
 

【平面図】

Before

After

Before After