建物遺産~重要文化財を訪ねて~
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成巽閣
成巽閣は、文久3年(1863)、加賀藩13代目藩主・前田齊泰(なりやす)が母・眞龍院の隠居所として建築した。兼六園の一角にあり、金沢城の巽(たつみ)の方角にあったことから創建当初は「巽御殿」と呼ばれた。明治期に入り、「成巽閣」と改められた。2階建寄棟造り、屋根は柿(こけら)葺き。1階は、大名家に相応しい風格のある「謁見の間」を中心に、奥方の隠居所らしい優雅さを備えた書院造りの寝所、居間などが配されている。2階の部屋は、群青色や紫色を天井や壁に用い、色彩と材質に意匠を凝らした数奇屋風の造り。眞龍院は明治3年(1870)、84歳でこの巽御殿で生涯を終え、その後は歴代の天皇、多くの皇族を迎え、現在は加賀前田家の遺構として一般に公開されている。