建物遺産~重要文化財を訪ねて~

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武雄温泉新館及び楼門

武雄温泉は、1300年も前に書かれた「肥前風土記」にも出てくる歴史ある温泉。江戸時代には長崎街道の宿場町として栄え、宮本武蔵やシーボルト、伊達政宗、伊能忠敬などが入浴した記録も残されている。この新館と楼門は、近代になって武雄温泉の拠点として計画され、辰野・葛西事務所が設計し、清水満之助(現・清水建設)が施工した。新館は、木造一部二階建、正面中央に車寄せを備え、左右対称に男女の大浴場などが配されている。大浴場の湯気抜きは八角形で風情のある作りになっている。二階は休憩所として和室5部屋がある。楼門は、いわゆる竜宮門と呼ばれる朱塗りの門で、釘を一本も使用していない建物。その天井には、辰野金吾設計で同年竣工した東京駅に描かれなかった干支4つを見ることが出来る。新館及び楼門は、伝統的な和風意匠を基調にしつつ、細部の意匠や架構に新しい試みが見られ、高い価値がある。当時の建築界をリードしていた建築家の辰野金吾が関与した数少ない和風建築としても貴重。