建物遺産～重要文化財を訪ねて～

旧香港上海銀行長崎支店

香港上海銀行は明治２５年(1892)に長崎に支店を開設。現在の建物は、工部大学校造家学科（現・東大建築学科）中退し渡米し鉄骨建築を学んだ下田菊太郎の設計により明治３７年(1904)に完成した。レンガ造３階建で外側に安山岩を張り、正面のアーチや列柱は石造りでデザインをこらした。２、３階部分を通してコリント式の大オーダー、上に切妻破風を配した。内部は、１階の壁や天井は白漆喰で仕上げられた営業室、２、３階は各部屋ごとに壁の色を変えた行員の個室などであった。この支店は昭和６年(1931)に閉鎖され、その後、警察関係の庁舎として用いられた後、長崎市立歴史民俗資料館になったが、補修改修工事を経て、平成８年(1996)旧香港上海銀行長崎支店記念館としてオープンした。銀行建築として、重厚で端正な意匠であり、長崎の海岸通りに建つ規模の大きい建物として欠かせない存在である。