STYLE BOOK

「帽子」 (8月25日(土)放送)

番組の69回目のテーマは「帽子」。
男の遊び心が如実に現れるファッション・アイテム。それは帽子だ。
帽子には、ジャケットのようなドレスコードもなければ、アクセサリーのようなゴージャスさも、靴や時計のような、生活上の必要性もない。だからこそ、帽子にまで気配りができている男は、もっとも遊び心のある男と言えるのだ。

帽子をどんな風にコーディネイトして楽しめばいいのか。
そのヒントが、何本かの映画に見てとれる。
ロバート・レッドフォード主演「華麗なるギャツビー」。
アカデミー衣装デザイン賞を獲得したこの作品では、紺のスーツに合わせた白いソフト帽が印象的だ。
襟元と袖口から覗くワイシャツの白と、白い帽子が、紺色のスーツを涼しく見せる。また、帽子のリボンとネクタイの色を合わせた、上品な着こなしも心憎い。

ロマン・ポランスキー監督のハードボイルド・ミステリー「チャイナタウン」。
この映画は、帽子をコーディネイトする上での基本的なスタイルが学べる教科書的存在だ。ジャック・ニコルソン演じる私立探偵ジェイクはソフト帽がトレードマーク。帽子の色使いは、常に、スーツと同系色だ。スーツの色とともに変わる、ソフト帽の色に注目したい。

日本に帽子が伝わったのは、明治時代。
文明開化の足音とともに、このファッション・アイテムも爆発的に広がった。
スーツや礼服など、フォーマルなシーンで帽子は欠かせないアイテムだった。
しかし今や帽子は、カジュアルシーンでこそ愉しめるアイテムだ。

東京・浅草にある吉田製帽。吉田富生さんは、昔ながらの木型で帽子を作り続ける、数少ない職人の1人だ。彼は主にネットを通じて、「TOMIYUKI」のブランド名で、ハンチングのオーダーを受け付けている。 ウールや牛革、羊のスゥェードなど、自分好みの生地を、自分好みのフォルムに仕上げてもらえば。帽子への愛着も深まるだろう。
自分のオーダーした帽子がすべて手作りで仕上がっていく。
出来上がりへの期待感に胸も膨らむ。
手作りの職人が操る、年季の入った道具によって、一枚の生地が帽子へと生まれ変わり、魂が宿る。
これほどの贅沢はまたとないだろう。

ヨーロッパにはこんな言葉がある。
「帽子を被っていない男は、紳士であることを諦めている男だ」と。
帽子は、ファッションであると同時に男の品格を示す道具でもあるのだ。