STYLE BOOK

「京・和小物(2)」 (8月4日(土)放送)

番組の66回目のテーマは「京・和小物その(2)」。
300年の老舗を誇る、俵屋旅館。
京都御所の南に位置するこの宿は、江戸時代に創業。この宿が、まさに小京都。
玄関では、江戸時代に作られた屏風絵が彼らを迎えた。
日本の伝統と文化が、この宿の中で静かに佇んでいるのだ。
しかし俵屋は、その伝統を、ただ守っているだけではない。
それは部屋を見れば一目瞭然。風情ある和室の片隅には、小さな洋の空間がしつらえてある。ライティングデスクまで置かれた部屋は、まるで西洋のホテルのよう。
しかし、よく見ると、そこには京都の伝統を生かして作られた、品のいい小物が控えめにデスクを飾っている。ゆっくりと現代風にアレンジし、未来へと伝えるのが、この街の流儀。決して伝統美の雰囲気を損なうことなく、時代に合わせて進化する。
バーンスタインやヒッチコックら、この宿に投宿した海外の客も京都の伝統と、その使い勝手のよさを十分に満喫したのではないだろうか。

俵屋で使われているオリジナルアイテムを俵屋に隣接する「ギャラリー遊形(ゆうけい)」で僕らは手にすることができる。
俵屋オリジナルとして有名なアイテムである石鹸。
天然香料がエレガントな香りを漂わせる。トラベルセットとしても重宝がられる逸品だ。
オリジナル・ブレンドのお香が使われた、シューインセンス。
靴の臭いをおさえるアイデア商品でありながら、さりげないおしゃれを演出する。
これらオリジナルグッズのデザインには、すべて第11代目直系当主、佐藤年がかかわっているという。積み重ねた歴史と伝統の軸は、決してブレることがない。

伝統を守るのではなく、時代に合わせて進化させる。
それは京都を本場とする着物の世界でも同じだ。中でも、絵柄を自由に描くことができる京友禅は着物を飛び出し、別のステージへと変わろうとしている。まるで、元は扇絵師であった始祖、宮崎友禅斎がそのキャンバスを扇から着物に変えたように、その弟子たちも新たな試みを続けているのだ。

CGデザイナー、川邊祐之亮(かわべゆうのすけ)。彼は友禅の柄をコンピューターでデザインする。350年の伝統をデジタル・データ化することで、着物以外への絵付けを実現したのだ。世界に類を見ないほど、多彩な色彩で染めあげる友禅の技が、今に蘇った。そんな彼の父親は、京友禅の名工として知られる、手描き友禅職人、川邊善司(ぜんじ)。祐之亮は、家業として受け継がれてきた伝統の技と代々に伝わる古典的なデザインをあえて着物から切り離すことで、友禅に新たな光を当てたのだ。

そんな彼の新作は「YUZEN トートバッグ」だ。
バッグのベースには丈夫なキャンバス地の生地を使用。持ち手と縁取りには牛革を使い、裏地に友禅柄を縫い合わせたデザインだ。
友禅のデザインは女性を美しく飾ることを目的に、長い時間をかけて磨かれてきた。 それが裏地としてさりげなく飾られたとき、バッグにも新たな価値が生まれる。 友禅は今も昔も洗練されたファッションなのだ。

祇園に程近い路地裏に、今も昔ながらの京町家が多く残る古い町並みがある。
その一角に店を構えるユニークなショップ「オリーフ」。
店内には紳士用の帽子が数多く並ぶ。実はそのどれもが、着物の古着をリメイクして作られたものだ。日本全国から、最高級の着物が集まる京都ならではの新たなアイテムと言えるだろう。オーナー藤岡元(ふじおかげん)のテクニックは、着物の洗い張りの伝統を応用したものなのだ。その後、アイロンで伸ばした生地を型どおり裁断する。 着物1枚から、およそ5~6個の帽子が作れるという。 クラシックタイプのハンチングには大島紬が使われている。 トラディショナルな格子柄、涼やかな藍色は、どんなファッションにも合わせやすい。 ふんわりとした柔らかさは、使い込まれた大島の古着にしか出せない手触りだ。 帽子を脱いだ時に見える裏地の粋。遊びのためにサテンを使う贅沢。

1200年を誇る歴史の中で、この街は何度も生まれ変わり、蘇ってきた。
京都は常に最先端のセンスを求められてきた。
僕らの目の前に広がるのは、古きよき京都ではない。現代の眼が認めた本物の凄さなのだ。そのデザインは古さと新しさを併せ持つ。四季折々の自然をいつくしむ心はまさにエコロジー時代にもマッチする。
まさにスローデザインといえるのではないだろうか。

【番組で紹介した店の連絡先】
俵屋旅館
京都府京都市中京区麩屋町通姉小路上ル
電:075-211-5566

ギャラリー遊形
京都市中京区姉小路通麩屋町東入ル
電:075-257-6880

有限会社ジャパンスタイルシステムズ
電:075-451-7936
Hp:http://www.jss-kyoto.jp/index.html

織布(オリーフ)
京都府京都市東山区山城町284北7
電話 075-525-1508
土日のみ営業
それ以外はHPで受付 www.orife.net