STYLE BOOK

「味噌汁」 (6月9日(土)放送)

番組の58回目のテーマは「味噌汁」

「日本の朝」といえば誰の頭にも浮かぶ共通の映像がある。
「台所で味噌汁を作るお袋」の映像だ。
柔らかな朝日。ネギを刻む音。台所から漂うあの香り・・・
味噌汁は、そんな懐かしい記憶を呼び覚ます「心の味」だ。
ライフスタイルがどんなに洋風になろうともずっと守られてきたこの味。

そもそも味噌は発酵に使う麹の原料によって大きく3つに分類される。
「米味噌」「麦味噌」「豆味噌」の3種類だ。
さらに、辛さによって甘味噌・甘口味噌・辛口味噌に別けられる。

「米味噌」の中でも代表的なものの1つ、仙台味噌。辛口でコクがあるのが特徴だ。
同じく「米味噌」の中で最もポピュラーなものが「信州味噌」だ。黄色みを帯びた淡色で辛口でもあっさりとした味。
そして米味噌の中で、関西で広く作られる西京味噌は淡いクリーム色。料理の幅を広げる白甘味噌の代表だ。
また九州では「麦味噌」が一般的。麦の甘味と香ばしさが独特だ。
東海地方を中心に作られるのが「豆味噌」。
愛知の「八丁味噌」で代表される渋味と旨みが強い味噌だ。

そして昔から東京で作られてきたのが「江戸甘味噌」だ。
これは米味噌系の甘味噌だが、その光沢のある赤褐色の色からは想像もつかないほど、しっとりとした旨みをかもし出す。遠く徳川の時代から親しまれてきたこの味噌は、江戸庶民の暮らしになくてはならない味だったのだ。

東京・中野にある味噌の老舗「あぶまた味噌」。ここでは江戸っ子が愛した江戸甘を丁寧に作り続けてきた。
そもそも中野の青梅街道一帯は、古くから味噌や醤油の醸造所が集まる場所として栄えてきた。あぶまた味噌は、その中心だったのだ。

京料理の老舗「菊乃井」。
こんな名高い料亭でも、味噌汁は椀物の1つとして客たちに振舞われている。
日本食の代表として、海外では寿司が有名だが、家で寿司を握ることは稀だ。
家でも店でも作る料理としては、味噌汁ほど、ポピュラーな日本食はほかにないだろう。

海外に長く滞在すると誰もがこう口にする。「ああ、米が食いたい」
しかし実際に1番ホッとするのは、あったかい味噌汁を一口含んだ瞬間ではないだろうか。もはや海外生活が当たり前になった僕らは、本来、こう叫ぶべきなのだ!
「ああ 味噌汁が飲みたい」
全国には数百種類もの味噌があり、季節ごとに旬の具がある。
明日はどんな味噌汁を飲もうか。また、楽しい悩みが1つ、増えたようだ。