STYLE BOOK

「美術館」 (3月10日(土)放送)

番組の47回目のテーマは「美術館」。
美術館を「アートを勉強する」場所だと思っていないだろうか?
学ぶのではなく、感じ取る。眺めるのではなく、体感してみる。
そんな美との出会いの場が本来の美術館なのではないだろうか。

六本木。
夜の遊び場として賑わうこの街が、今、アートを中心にした街へと変わろうとしている。
3月末に東京ミッドタウンにオープンするサントリー美術館。
基本理念である「生活の中の美」をテーマに、絵画や工芸品を展示する。

六本木ヒルズの森アートギャラリー、サントリー美術館とともに、六本木アートトライアングルを形成するのが1月にオープンした、国立新美術館だ。

波打つ巨大なガラスのカーテンウォールが目を引くモダン建築。
その光る繭のような美しさが大都会の夜に一際映える。
この美術館は、展示スペースを区分けすることで、最大10を超える展覧会が同時開催できる。気に入った展示だけを観て、料金を払う、いわばシネコンのようなシステムだ。
これまでの美術館に比べて天井が高く、広い展示スペース。
開放的な空間でゆったりと美に触れることができる。
この美術館の最大の特徴は、コレクションを持たないこと。
他の4つの国立美術館の所蔵品を活用しつつ、その都度企画を立てていくシステム。
作品を所蔵する役目を放棄することで、その分、広くて多目的な展示スペースを確保することができた。

八ヶ岳のふもと、山梨県長坂町、旧清春村。
静かな山間の地に「清春芸術村」はある。
ここは美との出会いだけでなく、創作の場を提供してくれる。
洋画家、梅原龍三郎(うめはらりゅうざぶろう)のアトリエを移築。
梅原が使用していた様子をそのままを保存している。
梅原は、奔放自在な画風で日本の油彩画を確立。
内部には、梅原が愛用した画材類だけでなく、カンバスには、絶筆となった作品が、そのまま展示されている。巨匠のアトリエを見ることで、作品では知り得ない創作者の息づかいを感じとることができる。

美術館に行くきっかけは何でもいい。
そこに待っているのはアート作品だけではない。
自分だけの心踊る空間。そんな美術館を、いくつも持ちたい。