市長はムコ殿
ストーリー
第4話 「挫折は宝もの」
職員の辞職願にハンコを押して退職辞令を出すのも、市長の仕事の一つである。職員たちの人生を決する判断をおざなりにやり過ごすことを乙女に注意された大将は、上司として真剣に岸田信太郎(33)の退職届と向き合う。東大卒の経歴を持つ優秀な職員である。ゴミ処理施設建設問題反対派のリーダーとして前市長のために尽力したという人物だけに、何とか退職を思いとどまらせるよう乙女に発破をかけられる大将。
「部下がついてこないようじゃ、まだホントの市長とは言えませんよ!」
岸田に会ってみると、ゴミ処理施設建設の反対を進めてきたが賛成派に糾弾され、責任を感じて退職を申し出たのだ。そして"世間知らずのエリート"のレッテルを貼られ、おおいに挫折感を味わっているのだった。
それと時を同じくして、長女の鈴音(18)も進路についての問題を抱えていた。高校での進路調査に、第一希望『フリーター』と記入していたのだ。
そんな鈴音の希望を真理は理解できず、とりあえず大学に行けとしか言えない。
「ママは私を妊娠して大学やめなくちゃならなかったから、自分の夢を私に押しつけたいだけなのよ!」
二人は激しく衝突したかと思うと、鈴音は部屋に閉じ籠もってしまう。
大将は鈴音が児童文学作家を目指していることを侑希から聞かされる。はじめて鈴音の将来の夢を知った大将は、胸に込み上げてくるものを感じながらも、今まであまり理解を示していなかったことを反省する。
そんな時、本棚の児童文学雑誌の中から、鈴音の名前を見つける。それは児童文学新人賞の二次選考通過のページであった。鈴音は自分で作品を書いて応募していたのだ。
応募した作品が三次選考で落選し、鈴音は挫折感を味わっているのだった。
「まだ諦められないんだったら、とことんやってみればいいんだよ。人生に正解の道なんてないんだから……」
大将は鈴音のやりたいことを理解し、応援する言葉を告げる。すると、鈴音は部屋から顔を出し、真理と仲直りする。
翌日、鈴音の進路希望の第一希望の欄には、以前とは違ったことが書かれていた。
その事がきっかけで大将は役所を辞めようとしている岸田にも、もう一度話をしてみようと思い立つのだった……。