映像歳時記 ~七十二候・旧暦が奏でる日本の美
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五十五候「山茶始めて開く(つばき はじめてひらく)」

二十四節気の暦は立冬!

「山茶始めて開く(つばき はじめてひらく)」
この山茶(つばき)とは、椿の事ではなく山茶花(さざんか)の事を指しています。山茶花という漢字は、山に生え、花を咲かせる茶の木という事で、その昔、葉の部分をお茶として飲んでいた事に由来すると、いわれています。今回の候では、なめこやヒラメ、もらい風呂、囲炉裏、お火焚など、この季節の話題を楽しくお送りします。

この時期になると「なめこ」が旬を迎えます。 お味噌汁に入った「なめこ」の、あの食感は堪りませんよね。昔から愛されてきた「なめこ」ですが、食用としているのは、実は日本だけなのです。また傘の開いた大きなものは直火焼きにすると、香りとシャキシャキとした歯ごたえが楽しめます。

「左ヒラメに右カレイ」とよく言われますが、目のあるほうを表にして置いた時、頭(目)の位置が左にくるのが平目。右にくるのが鰈(カレイ)です。江戸前寿司でのヒラメの味わい方は昆布締めにかぎります。乾いた昆布は、ヒラメの水分を吸収し、なおかつ昆布で締めることによって、保存が効くようになるのです。そして、包んだヒラメの身に昆布の旨みが加わり、さらに食感も増す事で、最高の美味しさを引き出す事に成功したのだといいます。

寒くなってきたこの季節は、お風呂の時間が格別ですよね。でも昔は今とは違い、どの家にもお風呂があったわけではありませんでした。そうした中で生まれた文化が、「もらい風呂」でした。こちらの絵は、きりえ作家・滝平二郎さんの作品。あの頃、近所の家がお風呂を焚くと「お風呂あるから入りに来てよ」と知らせてくれましたね。母親たちはよく「風呂入り話」に花を咲かせていました。

懐かしいものを思い浮かべる時、すぐに思い出すのが「囲炉裏」ではないでしょうか。家族で囲んで会話も楽しめる「一家団らん」の場でもあった囲炉裏は、まさに家族の一員とも言うべき存在でした。また、囲炉裏には家を丈夫にする機能もあったといいます。薪を燃やす時の煙やススが、木材を「燻す」ことで、防虫・防水の効果もあったのだと言います。

京都の11月は「火のお祭り月」としても有名です。 京都地方の神社や民家では、1年の五穀豊穣に感謝し、火を焚いて稲荷を祭り、日常の穢れや罪を祓い心身を清める「お火焚」という行事が、古くから行われていました。ホタケ、オホタケ、オホタキとも呼ぶそうです。中でも11月8日に行われる京都・伏見稲荷神社のお火焚は、全国から10万本の願い事が書かれた火焚串が集まり、それを一斉に燃やすため、立ち上る炎に圧倒されてしまいます。