新・にほん風景遺産~故郷を見つめなおそう~

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奄美ケンムンの森
~薩摩藩士が見た幕末の風景~

鹿児島市の南西約400kmに浮かぶ奄美大島。周囲約460km、北方領土を除くと日本の島の中では沖縄本島、佐渡島に次いで3番目に大きい島だ。奄美大島は、太古の昔に大陸から遮断された島で、琉球(沖縄)や鹿児島、東南アジアの文化を消化しながら、独自の自然・文化を築いてきた。島の北部には美しいビーチや農地が点在、サトウキビの栽培などが盛んに行われている。中南部の大半は山林で占められ、亜熱帯性照葉樹が広がる。その森からつながる川の河口には、広大なマングローブの原生林が広がっている。奄美の森には、ここでしか見る事ができない固有の生物が多く生息し、アマミノクロウサギやルリカケスなどの天然記念物などが住んでいる。
薩摩藩の上流藩士・名越左源太は、薩摩藩のお家騒動に連座したとして、1850年から1855年までの5年間、奄美大島に遠島されていた。奄美の暮らしに興味を抱いた左源太は、当時の奄美の暮らし(衣・食・住・なりわい・行事・信仰)や動植物などの自然を彩色された図入りで詳細に記録。この記録は、「南島雑話」と総称され、幕末の奄美を知る上で欠かせない資料といわれている。
幕末の奄美大島の風景をたどるのは、俳優・中本賢。「南島雑話」にも描かれた伝統の島唄を堪能し、塩豚料理やパパイヤの漬物など、奄美の郷土の味に舌鼓。奄美在住の写真家との奄美大島最高峰・湯湾岳登山では、頂上から絶景を望み、さらに森深くへ分け入り、希少な植物・コゴメキノエランやユワンツチトリモチを発見。夜間には天然記念物・アマミノクロウサギやケナガネズミと出会う。また、森に住むという妖怪・ケンムンの存在から、奄美の人と森との共生について知る。