新・にほん風景遺産~故郷を見つめなおそう~

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出雲 神々の集まる季節
~古事記 八岐大蛇伝説をめぐる~

島根県の東部に位置する出雲地方は、日本海や宍道湖、美しい里山など自然の風景の中に数々の由緒ある神社仏閣が残る神話の里。天地の始まりから伝える「古事記」における神々の物語「上巻」のおよそ三分の一は、出雲が舞台といわれる。日本最大の社を誇る出雲大社は、縁結びの神様で知られるが、創建の由来は古事記「国譲り」神話と伝わる。
出雲地方を潤す斐伊川(ひいかわ)は、奥出雲・船通山を源に日本海へと注ぐ全長約153キロの大河。源流の船通山は、古事記で荒ぶる神・スサノオが地上に降り立った伝説の地。スサノオは人々をさらう恐ろしい大蛇・ヤマタノオロチを退治し、この地を治めた。斐伊川の流域には、オロチがすんでいた場所や、退治したオロチの首を埋めた場所など、神代の昔の伝説が今も息づいている。かつての斐伊川は何年かに一度、決壊を繰り返した暴れ川。それをオロチに例え、スサノオが治水事業で治めたのではないかといわれる。また、出雲は砂鉄の産地。日本海に面し、海上交通の要地でもあるため、大陸の文化や技術が伝わり、古くから砂鉄を利用した製鉄が行われてきた。スサノオによるオロチ退治の神話は、古代の製鉄文化と当時の戦争を象徴しているともいわれる。
旅人の作家・島田雅彦が、スサノオが降り立ったとされる船通山に登り荘厳な滝と出会い、斐伊川の清き水が育んだ仁多米に舌鼓。さらに、砂鉄から作られた玉鋼を原料に使う刀鍛冶や、神社や神楽などで使われる横笛職人の伝統の技や心意気に触れる。 古事記の足跡をたどり、出雲大社や斐伊川流域など神々の国・出雲を旅する。