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 絵画の歴史は、実に多くの美女たちに彩られています。ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」はその代表格でしょう。制作された16世紀初頭、神や聖人ではない女性の半身像をこれほど優雅に描いた作品はありませんでした。
  絵画の美女のルーツをさかのぼると、たどり着くのは聖母マリアです。5世紀にマリアがキリスト教の聖人とされて以来、幾多の画家たちがその慈愛あふれる姿を絵に表してきました。なかでもマリアを誰よりも優美に描いて名をはせたのが、「聖母の画家」と呼ばれたラファエロでした。恋人がモデルともされる「椅子の聖母」はその代表作です。
  西洋絵画で定番の美女といえば、神話の女神たちもはずせません。ルネサンスの始まりを告げるボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」は、ブームのきっかけを作った画期的な作品です。ティツィアーノの傑作「ウルビーノのヴィーナス」は、神話に名を借りた裸婦像の典型となり、後世のヌード表現に大きな影響を与えました。
  15世紀頃、聖書や神話以外の美女も絵画に登場し始めます。台頭していく王家の女性たちです。百年戦争でイギリスに勝利を収めたフランス国王シャルル7世の愛妾アニエス・ソレルは、その美貌で王をとりこにし、国政を動かすほどの権力を手にしました。彼女をモデルとするフーケの「ムーランの聖母子」は、その崇高なまでの美しさを今に伝えています。時代は下り19世紀、ハプスブルク帝国末期の皇妃エリザベートも、ヨーロッパ随一の聞こえ高い絶世の美女でした。並はずれた節制と鍛錬によって磨き上げられた美貌は、宮廷画家ヴィンターハルターの絢爛たる肖像画のなかで永遠の輝きを放っています。
  芸術の黎明以来、女性は神秘に包まれた究極の美のテーマであり続けてきました。画家たちは美女をどのように描き、そこにどんな思いを託してきたのでしょうか。名画の裏側に秘められた愛と欲望のドラマに迫ります。


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