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  パリの中心部、セーヌ川の左岸に立つオルセー美術館は、年間300万人以上の人々が訪れる世界屈指の美の殿堂です。開館したのは1986年。建物はもともと1900年にパリ万博の開催に合わせて建てられた鉄道駅でした。40年足らずで役目を終えた駅舎は長らく廃墟同然の状態でしたが、国家プロジェクトによる大改装工事を行い、美術館として生まれ変わったのです。

  パリにある3つの国立美術館のうち、ルーブル美術館には先史時代から19世紀半ばまでの絵画や彫刻、国立近代美術館には第一次世界大戦以降の現代美術が収められています。その間の19世紀半ばから20世紀初頭にかけての美術品を収蔵するのがオルセー美術館です。

  この期間は美術史の中でもとりわけめまぐるしい変革を繰り返した激動の時代でした。古代ギリシャ・ローマ美術を模範とする古典的な絵画の伝統に反旗を翻したクールベやミレー。マネはセンセーショナルな裸婦像で、近代絵画の扉を開きました。これに続いたのが、モネ、ルノワール、ドガといった印象派の画家たちです。光と色彩の表現を追求した彼らの軽やかな作品が脚光を浴びた時代に、内なる世界へ目を向けた画家たちがいました。鮮烈な色彩で主観を表現したゴッホ。抽象化によって観念的なテーマを掘り下げたゴーギャン。そして、モロー、シャヴァンヌ、ルドンといった象徴主義の画家たちは、幻想的な描写で近代人の心の闇に迫ろうとします。ゴーギャンや象徴主義の流れをくんで登場したナビ派と呼ばれる芸術家の集団は、装飾の分野でも活躍し、絵画表現の可能性を大きく広げました。

  近代化を遂げ、未曽有の繁栄を謳歌する一方で、世紀末の閉塞感が人々の心に影を落とした19世紀後半のパリ。この時代に、芸術家たちは何をみつめたのでしょうか。オルセー美術館に集められた傑作の数々から、パリの世紀末を読み解きます。


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