ヨーロッパの美術大国というと、どこを思い浮かべますか? ルネサンス運動の中で遠近法など西洋絵画の基礎を築いたイタリア?
18世紀以後、ロココや印象派など新しいムーブメントを次々と生み出し、画家達のあこがれとなったフランス?
まだ日本ではあまり知られていない、隠れた美術大国がベルギーです。数多くの巨匠を輩出しただけでなく、この国は西洋絵画のもうひとつの源流でもあるのです。
西洋絵画といえば油絵。実は油彩の技法を完成させたのは、ベルギーのフランダース地方で活躍した画家、ヤン・ファン・エイクでした。
彼は息をのむほど細密な作品を創作しました。布地や絨毯、金属は、まるで写真と見まがうほどリアルな質感で描かれ、宝石やガラスは透明感まで再現されているのです。一本一本描き込まれた髪の毛や、虫眼鏡で拡大しなければ確認できないほど細かく描かれた背景、そして鮮やかな色彩。ヤン・ファン・エイクの作品は、同時代の画家達を驚嘆させ、彼の後を追って多くの画家が油彩の技法を研究し始めます。
ヤン・ファン・エイクが活躍したのは、盛期ルネサンスより半世紀以上も前の、13世紀後半から14世紀初頭に掛けてのことでした。そして、ヤン・ファン・エイクやこの地方で活躍した画家達の作品は広くヨーロッパに広がり、イタリア・ルネサンスの発展にも大きな影響を与えたのです。
こうした優れた技術を素地にして、発展していったベルギーの絵画。
番組では、ブリュッセル、ゲント、ブルージュの三都の美術館を巡り、ウェイデン、メムリンク、ヒエロニムス・ボス、ブリューゲル一族、ルーベンスなど、この地で活躍した巨匠たちの名作の数々を紹介していきます。ベルギー七大秘宝のひとつ、聖ウルスラ伝の聖遺物箱もじっくりとご覧ください。