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 雄大な自然や趣ある街の景観を描いた風景画は、誰もが親しみやすく、人気のある絵画ジャンルのひとつです。しかし、それが芸術として開花するのは、意外にも近代になってからのことでした。

 西洋美術はそもそも、キリスト教の成立に起源をさかのぼる宗教画から始まりました。風景は聖書の物語を伝える絵の中で、あくまで舞台背景として、長い間わき役の地位に甘んじていました。そんな立場を変えるきっかけとなったのは、16世紀に始まった宗教改革です。宗教画を否定する教義の浸透によって、画家たちは新たなテーマを模索する必要に迫られたのです。そこで目を向けられるようになったのが風景画でした。

 風景を純粋に主役とする絵画はまず、宗教改革の震源地・ドイツで生まれ、オランダやベルギーなど周辺国、やがてヨーロッパ全体に広まっていきました。そして、その黄金期とも呼べる隆盛は、2人の天才画家が競い合った19世紀のイギリスにもたらされます。

 わずか1歳違いで同時代を生きたターナーとカンスタブル。ターナーは大都会ロンドンを拠点に、自然の驚異や産業革命によって変わりゆく時代を映し出すダイナミックな風景画で、美術界にセンセーションを巻き起こします。片やカンスタブルは生まれ故郷の農村に根を下ろし、穏やかな自然を忠実に描写した叙情あふれる風景画を手がけ、海外でも名声を高めました。それぞれ環境もスタイルも対照的ながら、伝統を一新する革命的な手法と表現は、印象派の画家たちにも受け継がれ、20世紀の新たな芸術の地平をも切り開くことにもなりました。

 番組では、ターナーゆかりのロンドン、カンスタブルの故郷イーストバーゴルトを訪ね、2人の巨匠の代表的な名画の背景を取材。さらにはドイツ、オランダ、フランスなど各国を代表する画家たちの傑作も紹介しながら、風景画の歴史をひもときます。

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