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 19世紀パリの市民生活や可憐な美少女を描いた印象派の巨匠・ルノワール。彼が残した作品の数はおよそ6000点。そのどれもが生きる喜びにあふれ、見る者を幸せな気持ちにさせてくれます。「絵画は楽しくて明るくてきれいなものであるべき」―― そんな信念を生涯貫き通した彼は、悲しみを一切描いたことのない希代の画家でした。

 ルノワールが生まれたのは1841年。13歳で磁器の工房に就職し、絵付け職人として人生のスタートを切ります。ところが、産業革命に伴い、作業が機械化されて失職。皮肉にもこれが画家・ルノワールを誕生させる転機となったのです。

 画塾に通うようになったルノワールは、ここで出会った画家たちと美術展を開催します。しかし、作品がことごとく酷評を浴びるなど、船出は多難に見舞われました。それでも、人を喜ばせたいという職人的な信念に基づいて描き続けた明るく優美な絵は、徐々にコレクターたちの心をとらえ、ルノワールは着実に名を上げていきます。一時は画風の迷いから、袋小路に入り込む曲折もありましたが、名声はやがて海外にまで響き渡るようになり、50代にさしかかる頃には確固たる巨匠の地位を手にするのです。

 晩年のルノワールはリウマチを患い、歩くこともままならない不自由な生活を強いられました。温暖な気候を求めて移り住んだ南仏のカーニュ・シュル・メールでは、家族と穏やかな余生を送ります。そして、この頃のルノワールが創作意欲を最も駆り立てられたテーマ、それは裸婦でした。自らの肉体が衰えれば衰えるほど、描かれた裸体は力強く、豊満になっていきます。女性は彼にとって、生命の象徴であり、創造の源でもあったのです。

 一日として休むことなく、人々を楽しませる絵を描き続けたルノワール。その一途な生涯と作品に込められた思いに迫ります。

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