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 16世紀ドイツの巨匠アルブレヒト・デューラー。その代表作のひとつが、自らをキリストの姿に似せて描いた自画像です。芸術家は神から才能を授かった特別な存在だと信じた彼は、神に近づくことを目標とし、その決意を絵に表したのです。

 印刷機の発明から四半世紀、当時の出版ブームに乗じ、デューラーはまず木版画で頭角を現しました。聖書を題材とした連作木版画『ヨハネ黙示録』は世紀末の世相を背景に、精緻な版画と独創的な表現で話題を呼び、名声を一躍高めました。さらに繊細な技が要求される銅版画にも取り組んだ彼は、『騎士と死と悪魔』などの傑作で物の質感や光までも表現し、版画に革命を起こしました。

 デューラーは卓越した描写力を自然の観察によって養いました。神が創造した自然の中に、絶対的な美の法則を見出そうとしたのです。彼は動植物などの写生に水彩をはじめて使い、西洋美術における水彩画の第一人者となりました。子ウサギの毛の一本一本まで丹念に描写した『野兎』はその代表作です。

 あらゆる芸術をきわめようとしたデューラーが最も力を傾けたのは宗教画の制作でした。それは敬虔なキリスト教徒だった彼にとって、信仰そのものでもあったのです。修業のためベネチアに渡った彼は、ルネサンスの画家たちから最先端の宗教画を学び、ドイツに新たなルネサンスの花を咲かせました。

 神にあこがれたデューラーにとって、一大転機となったのが、ドイツ人のルターによる宗教改革です。キリスト信仰のあり方を大きく変えるルターの教えは、デューラーに光をもたらしました。『四人の使徒』は新境地を見出した彼の宗教観、人間観を描きつくした最晩年の大作です。

 高い志を抱き、ドイツの国民的画家となったデューラー。彼の故郷ニュルンベルクを訪ね、数々の名作から生涯に迫ります。

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