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 スペイン、マドリッドにあるプラド美術館は歴代の王が集めた3万点を超す名画コレクションがその元になっています。ここには一風変わった趣味があります。15世紀に活躍したオランダの画家ヒエロニムス・ボスの最大のコレクション。そしてもうひとつはギリシア生まれだからという呼び名が定着している16世紀の宗教画家エル・グレコの作品群。なぜこのふたつのコレクションがここに集まっているのでしょうか?

 鍵となるのはマドリッド郊外にある世界遺産エル・エスコリアル宮殿。神聖ローマ皇帝でもあった父、カルロス1世の遺言によりフェリペ2世が21年の歳月をかけて作った壮大な建物です。この建物の内側を彩るために、王はまさに山のような絵画を蒐集、さらに描かせようと考えたのです。

 王が気に入って集めたのがオランダの画家ヒエロニムス・ボスのものでした。代表作<快楽の園>もこの宮殿を飾ることになりました。フェリペ2世が生まれたのはボスがすでに亡き後。入手出来たわけは当時のスペインの領土を知ることが必要です。ボスの住んでいた現在のオランダ南部はスペイン領となっていたのです。

 宮殿建築の話を聞いて自らスペインに向かった画家がいました。エル・グレコ、その人です。クレタ島に生まれ、ヴェネツィアで絵画を学び、ローマで研鑽を重ね、35歳の時にスペインに向かいました。スペインの街トレド に住み、ここで着実に名声を上げ、39歳になりついにフェリペ2世からエル・エスコリアルの修道院を飾る絵の注文を受けました。しかし絵を手に入れた王は気に入らないとばかりに他の絵をかけることにし、以後エル・グレコは宮廷とは縁のない暮らしをトレドで送り、その生涯を終えました。

 しかし今ではエル・グレコの絵の多くはボスの絵とともにプラド美術館に並んでいます。歴史のちょっとした皮肉でしょうか。今回はこの2人の画家を、彼らに馴染みのある風景とともに案内していきます。

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