にっぽん今昔道 江原啓之のちょっと道草
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ストーリー

島根県江津"手間暇かけて守る江津"




今回は島根県の江津(ごうつ)で道草。「江」とは河口、そして「津」とは港の事。江津は、山陰地方最大の河川・江の川の河口に開かれた港町なんです。まだまだ交通の便が発達する前の江戸時代、江津は北前船の拠点として賑わいました。

今回は、そんな古い時代の名残を今に伝える江津の中心地、江津本町で "古き良き美しい日本"を探します。

早速、江の川沿いにぽつねんと佇む小さなローカル駅「ごうつほんまち駅」から道草スタート!「とても気持ちいい」と江原。しかし大自然溢れる駅舎から一歩町中に入ると、今度は石垣やお堀など昔の城郭を模して作られたという風情ある街並みが残されています。

江原、ぶらりと立ち寄った畳屋さんで「石州(せきしゅう)瓦(かわら)」という瓦を耳にします。石州瓦とは、江戸時代に江津で生まれた赤い屋根瓦の事。寒さや潮風に強い石州瓦は、やがて江津の港から全国に広がります。それまでは黒一色だった日本家屋の屋根に初めて赤色を持ち込んだのは、実は石州瓦だったと言われているんです。

江津本町に残る古い町並みを飾るのも、当然、石州瓦。色鮮やかな瓦の町並み歩きを楽しむ江原が見つけたのは、町の中でも一際大きなお屋敷。4代前までは廻船業を営んでいたという藤田さんのお宅は、何とペリーが浦賀に来航した嘉永六年(1853年)に建てられたんです。

何部屋あるか未だに分からないという藤田さん。何人分もの賄いを炊いた、とても大きな竈。冠婚葬祭の時だけに開かれるという通用門。そして火災時、延焼防止に家屋を倒す為につけられた鉄輪など、往時の繁栄が伝わる造りに大感激の江原でした。

続いて江原が向かったのは、町中にある一軒の和菓子屋さん。ここも何とも味のある造り。京都の町屋のように奥にとっても長いんです。調理場にお邪魔して更にビックリ!何とこちらのお店では竈が現役で使われているんです。竈以外にも、銅製の鉄板や分銅式の秤など昔ながらの道具がびっしり。ご主人曰く「機械で作るより手間暇かけて作ったものの方が絶対おいしいんです」

そんなご主人のこだわりが詰まった焼きたてのどら焼きに舌鼓。江原曰く「こんなにおいしいどら焼きを食べた事ない!」あまりのおいしさに、思わずおかわりしちゃいます。

お腹も満たされて元気満タンの江原。続いては、ちょっと足を伸ばして江の川上流の町を道草。

山並み迫る田舎道で出会ったのは、お茶席用の炭を焼いている炭焼き職人達。「八名窯」という伝統工法で彼らが作る炭は「菊炭」(断面が菊の花に似ている)と呼ばれ、全国の茶道家達から絶賛、注文が殺到しているんです。

江原、せっかくなのでと炭焼きをお手伝いさせてもらう事に。しかし、昔ながらの巻き割りから火付けの作業まで、慣れない作業に四苦八苦!手間暇かける事の大事さを、自らの体を持って体験します。

今回、出会った人々に共通していたのは「手間暇かける」という事。便利な物が溢れる都会ではむしろ省略されてしまう「手間暇」。しかし江原は、そんな「手間暇」にこそ、とても大事なモノがあるのだと再認識したのでした。