BS朝日開局15周年特別企画 黒柳徹子のコドモノクニ ~夢を描いた芸術家たち~

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放送内容

「クマのプーさん」「ドリトル先生」
児童文学の語り部、石井桃子の世界

太平洋戦争が始まる直前に、「クマのプーさん」や「ドリトル先生」を日本に紹介した児童文学者、石井桃子。その人生は、戦前、戦中、戦後とまさに、昭和の激動の時代とともにあった。

石井は、明治40年に埼玉県浦和町、現在のさいたま市で生まれる。日本女子大に進学した石井は得意の英語を生かし、在学中から作家・菊池寛のもとで英語の原書を翻訳するアルバイトをしていた。やがて、その仕事ぶりが認められ、菊池が創設した文藝春秋社に入社。さまざまな人物と出会い、名作を日本に紹介するチャンスをつかんだ。後に総理大臣となった犬養毅との出会いから、あの『クマのプーさん』を、作家・井伏鱒二との出会いから、『ドリトル先生』シリーズを世に送り出した。

石井は、優れた翻訳家であると同時に、作家でもあった。戦後の大ベストセラー『ノンちゃん雲に乗る』は映画化もされたが、この作品、実は戦時中に書かれたもの。しかも、徴兵され、明日の命もわからない友人のために執筆されたものだった。

戦後の石井は、スタジオジブリの宮﨑駿さんも愛読したという『岩波少年文庫』の編集責任者を務める一方で、東京・荻窪にある自宅の一部を子どもたちに開放する「小さな図書室」をオープン、その運営に力を注いだ。今回、石井の人生をたどるのは、子どもの頃にこの「小さな図書館」に通っていたという、作家の阿川佐和子さん。阿川さんは"石井が子どもたちの前で本を読み聞かせる"その現場にいた子どもの一人だ。この読み聞かせは、子どもたちの情操を育てたいという目的だけでなく、子どもたちの反応を見て翻訳を見直そうというねらいがあったともいわれる。「子どもたちに何を読み聞かせるべきなのか…」真摯(しんし)に見つめ続けた石井。戦後日本の児童文学の礎を築いた、石井桃子の人生をたどる。

【出演】阿川佐和子