ネイチャードキュメント 奇跡の地球紀行

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椎名誠が行く 東京・絶海の孤島!
八丈島から青ヶ島まで 秘境探検紀行

今回は、作家・椎名誠が、伊豆諸島の"絶海の孤島"青ヶ島と八丈島を訪れる。日本は6852の島々からなる世界有数の海洋国家。日本人は古くから島や海の恵みを糧に発展を遂げてきた。その多くが、今もなお、島々に残されている。それは、もちろん東京の島々も同じ。知られざる東京アイランドには何があるのか? 40年以上前に「椎名誠と怪しい探検隊」を結成し、71歳になった今も、仲間たちと共に、日本の離島やへき地に赴き、テントで寝泊まりしながら、自然豊かな日本を肌で感じ続けている椎名。〝希代の旅人〟はいったい何を見て、何を感じるのか。

<死ぬまでに一度は行きたい場所といわれる、絶海の孤島・青ヶ島の秘密>

絶海の孤島・青ヶ島。意外なことに、椎名にとっては初上陸となる島だ。東京から南へ358km、人口約170人の小さな島は、噴火で出来た海底火山で、島民は、海底から換算すると、標高およそ1500mの山の、ちょうど八合目あたりから上に住んでいることになる。多くの島を訪れて来た椎名だったが、まず驚いたのは、青ヶ島の形。海から切り立った島の壁は、大昔の噴火後に出来た外輪山。その内側に、プリンのような形をした内輪山が天明の大噴火で出来上がった。この風景を見た椎名は、「まるで天国のような島だ」と、島が持つ表情に感動する。そんな二重カルデラが作り出す、自然豊かな森、奇跡の楽園に分け入った椎名は、森の奥深くに踏み入った所で、天明の大噴火でも生き延びたといわれる、高さ30mを超える大杉と出合う。
そして、この島が活火山である証拠であり、地元では「ひんぎゃ(火の際)」と呼ばれる噴気孔も青ヶ島特有のもの。このような蒸気には有毒ガスが含まれるのだが、青ヶ島では地中の水が浄化し、きれいな水蒸気として吹き上がる。島民は、天然の地熱釜で島の幸を調理し、温泉の代わりにサウナで汗を流す。さらには、この地熱を利用して塩も作っているという。椎名も、捕ってきたばかりの海の幸、山の幸を地熱釜で調理し、絶品の卵や玉ねぎを堪能する。そして、島特産のサツマイモで作られた、地元の焼酎「青酎」を飲みながら、仲間たちと大いに語り合う。

  

<絶景の亜熱帯・八丈島の魅力>

八丈島とは40年来の付き合いになるという椎名。一時は船まで所有し、島との関係もことさら深く、町制60周年を迎えた八丈島から、特別表彰も受けている。東京から287km、羽田空港から飛行機でわずか45分の亜熱帯の島には、年間約8万人もの観光客が訪れる。"八丈ブルー"と呼ばれる美しい海でのダイビング。そして、太平洋を望む絶景の温泉施設や、新鮮な海の幸も味わえる、人気の観光スポットだ。しかし、椎名には"彼ならではの八丈島"があった。川や滝が多く、樹木がうっそうと茂る自然を抜けると、そこに現れるのが10万年以上前に出来た、標高700mの三原山。その目の前にあるのが八丈富士。実は、この2つの火山が合体して出来たのが八丈島なのだ。八丈富士が噴火した際に出た溶岩で生まれた荒涼とした世界「南原千畳敷」や、海の絶壁の上に広がる不思議な黒い砂「六日ヶ原砂丘」など絶景の数々。さらには、不思議な光るキノコと遭遇する。
 また、八丈島の独特な文化にも触れる。鮮やかに輝く山吹色の草木染め「黄八丈」に魅了された椎名は、ユネスコで世界消滅言語の一つとされている「八丈方言」を話せる島民と出会う。そして、島には戦争の記憶も残る。終戦末期、本土決戦が叫ばれる中で、軍隊が駐屯し、「回天」や「震洋」などの特攻兵器が配備された。硫黄島へ特攻機も飛び立って行った、知られざる歴史がこの島にはあったのだ。今回、その歴史に初めて触れた、椎名の思いとは?